大方にうち見たてま 夕顔03章08
原文 読み 意味
大方に うち見たてまつる人だに 心とめたてまつらぬはなし 物の情け知らぬ山がつも 花の蔭には なほやすらはまほしきにや この御光を見たてまつるあたりは ほどほどにつけて 我がかなしと思ふ女を 仕うまつらせばやと願ひ もしは 口惜しからずと思ふ妹など持たる人は 卑しきにても なほ この御あたりにさぶらはせむと 思ひ寄らぬはなかりけり
04038/難易度:☆☆☆
おほかた/に うち-み/たてまつる/ひと/だに こころ/とめ/たてまつら/ぬ/は/なし》067
ひきいれ/て おり/たまふ もの/の/なさけ/しら/ぬ/やまがつ/も はな/の/かげ/に/は なほ/やすらは/まほしき/に/や この/おほむ-ひかり/を/み/たてまつる/あたり/は ほどほど/に/つけ/て わが/かなし/と/おもふ/むすめ/を つかうまつら/せ/ばや/と/ねがひ もしは くちをしから/ず/と/おもふ/いもうと/など/も/たる/ひと/は いやしき/に/て/も なほ この/おほむ-あたり/に/さぶらはせ/む/と おもひ/よら/ぬ/は/なかり/けり
はたからちょっと拝する人でさえ、思慕し申し上げない者はない。情味に欠ける山出でも、花もとにはやはりたたずんでみたくなるものではないか、この君の光輝くお姿を拝見する人たちは、身分に応じて、自ら大切にいつくしむ娘を女房としてお仕えさせたいと願い、あるいは姿形のまんざらでもないと思う姉妹などがいる人は、卑しい仕事であっても、やはりこの方のお近くで下働きさせたいと思わない者はなかった。
大方に うち見たてまつる人だに 心とめたてまつらぬはなし 物の情け知らぬ山がつも 花の蔭には なほやすらはまほしきにや この御光を見たてまつるあたりは ほどほどにつけて 我がかなしと思ふ女を 仕うまつらせばやと願ひ もしは 口惜しからずと思ふ妹など持たる人は 卑しきにても なほ この御あたりにさぶらはせむと 思ひ寄らぬはなかりけり
大構造と係り受け
古語探訪
大方に 04038
意味がとりにくいが、「なつかしき御気色を見たてまつる人」と対立関係にあることを考慮すれば、間近でなく傍からくらいの意味になる。
御光 04038
まぶしいような光の姿。
かなし 04038
大切に育む。
仕うまつらせばや 04038
宮仕えとして光に与えること。光のお眼鏡にかなえば、第何番目かの妻の地位になる可能性がある。
卑しきにても 04038
身分が卑しいとも考えられるが、仕事が卑しい下働きということであろう。こちらは、光と結婚する見込みはない。