六条わたりにもとけ 夕顔03章02
原文 読み 意味
六条わたりにも とけがたかりし御気色を おもむけ聞こえたまひて後 ひき返し なのめならむはいとほしかし されど よそなりし御心惑ひのやうに あながちなる事はなきも いかなることにかと見えたり
04032/難易度:☆☆☆
ろくでう/わたり/に/も とけ/がたかり/し/みけしき/を/おもむけ/きこエ/たまひ/て/のち ひきかへし なのめ/なら/む/は/いとほし/かし されど よそ/なり/し/みこころまどひ/の/やう/に あながち/なる/こと/は/なき/も いかなる/こと/に/か/と/みエ/たり
六条御息所に対しても、応じそうになかったご様子をどうにか意に添わせ申し上げられたあと、うって変って熱がさめてしまったならばまったく申し訳の立たぬことであろうに、だがそこまでゆかずとも、手に落ちる前に惑乱なされたみたいに、闇雲にどうにかしようという態度がないのも、どうしたご了見かと思われた。
六条わたりにも とけがたかりし御気色を おもむけ聞こえたまひて後 ひき返し なのめならむはいとほしかし されど よそなりし御心惑ひのやうに あながちなる事はなきも いかなることにかと見えたり
大構造と係り受け
古語探訪
六条わたり 04032
場所によって人を表す。六条御息所のこと。
おもむけ 04032
他動詞で、相手を自分の意に従わせること。
ひき返しなのめならむはいとほしかし 04032
挿入句。極端な例を出し、そうではないが、こちらもだめなんだという論法。「なのめ」は、ありきたり。「いとほし」は、申し訳ないという後悔の念。「かし」は、話者の推論。
よそなりし 04032
まだ自分のものでなかった時の。
あながちなる 04032
無理にどうこうしようという一途さ。
いかなることにか 04032
思いを遂げるまではあんなにご執心であったのに、ひとたび自分のものになると、かつての狂おしいような愛情をみせなくなったのはどうしたことなのか、という光に対する話者の非難。