御書の師にて睦しく 夕顔14章02
原文 読み 意味
御書の師にて 睦しく思す文章博士召して 願文作らせたまふ その人となくて あはれと思ひし人のはかなきさまになりにたるを 阿弥陀仏に譲りきこゆるよし あはれげに書き出でたまへれば ただかくながら 加ふべきことはべらざめり と申す
04168/難易度:☆☆☆
おほむ-ふみ/の/し/にて むつましく/おぼす/もんじやうはかせ/めし/て ぐわんもん/つくら/せ/たまふ その/ひと/と/なく/て あはれ/と/おもひ/し/ひと/の/はかなき/さま/に/なり/たる/を あみだぶつ/に/ゆづり/きこゆる/よし あはれげ/に/かき/いで/たまへ/れ/ば ただ かく/ながら くはふ/べき/こと/はべら/ざ/めり と/まうす
学問の先生で、懇意にしておられる文章博士をお呼びになり、願文を作らせになる。誰それとは明かさず、愛しく思っていた人が帰らぬ事態となってしまったので、後生を阿弥陀仏にお任せ申し上げる旨を、愛情こまかにお書きになると、「もうこのままで、つけ加える点はございませんでしょう」とお答え申し上げる。
御書の師にて 睦しく思す文章博士召して 願文作らせたまふ その人となくて あはれと思ひし人のはかなきさまになりにたるを 阿弥陀仏に譲りきこゆるよし あはれげに書き出でたまへれば ただかくながら 加ふべきことはべらざめり と申す
大構造と係り受け
古語探訪
御書の師 04168
漢文の先生ないしは学問の先生。当時の学問はみな漢文で書かれていたので、学問をするとは漢文を読むことであった。
願文 04168
仏前で読み上げるために漢文で作られる、施主(この場合は光)の願いの文章。
その人となくて 04168
死者の正体を明かさずに。
阿弥陀仏に譲りきこゆる 04168
夕顔の後世を阿弥陀仏に託すこと。
書き出でたまへれば 04168
文章の草案を書く。直しを入れるのは文章博士の役だが、光の下書きで手直しの必要のない名文になっていたというのが、「ただかくながら加ふべきことはべらざめり」