君は夢をだに見ばや 夕顔14章11
原文 読み 意味
君は 夢をだに見ばや と 思しわたるに この法事したまひて またの夜 ほのかに かのありし院ながら 添ひたりし女のさまも同じやうにて見えければ 荒れたりし所に住みけむ物の 我に見入れけむたよりに かくなりぬること と 思し出づるにもゆゆしくなむ
04177/難易度:☆☆☆
きみ/は ゆめ/を/だに/み/ばや/と おぼし/わたる/に この/ほふじ/し/たまひ/て また/の/よ ほのか/に かの/ありし/ゐん/ながら そひ/たり/し/をむな/の/さま/も/おなじ/やう/にて/みエ/けれ/ば あれ/たり/し/ところ/に/すみ/けむ/もの/の われ/に/みいれ/けむ/たより/に かく/なり/ぬる/こと/と おぼし/いづる/に/も/ゆゆしく/なむ
光の君はせめて夢にでも逢いたいと思いつづけになっていると、この四十九日の法事を行われた翌日の夜、十分ではないものの、例の二人で過ごした院そのままの様子で、枕元に立った女の姿も同じ様子で夢を見たので、荒果てた場所に棲んでいた物の怪が私に取りついたことが機縁となって、こんなことになったのだあの場所を思い出しになっては不吉になられ。
君は 夢をだに見ばや と 思しわたるに この法事したまひて またの夜 ほのかに かのありし院ながら 添ひたりし女のさまも同じやうにて見えければ 荒れたりし所に住みけむ物の 我に見入れけむたよりに かくなりぬること と 思し出づるにもゆゆしくなむ
大構造と係り受け
古語探訪
思しわたる 04177
「わたる」は時間的継続。
かのありし院ながら 04177
「ながら」は、さながらでなく、そのまま。古語の「さながら」はそのままの意味だが、現代語の「さながら」はあたかもの意味であり、二つの物が似てはいるが違うのだという意味をもつ。ここは、かつて過ごした院がそのまま夢に出てきたのである。
添ひたりし女 04177
夕顔の枕元に立った女の霊。六条御息所であるという説と、故院の霊とする説と、どちらともわからないという説がある。私の解釈は最初の説であることは繰り返した。
物 04177
断るわけにいかない。
見入れ 04177
魅入る、取りつく。
たより 04177
きっかけ。