夕暮の静かなるに空 夕顔12章12
原文 読み 意味
夕暮の静かなるに 空の気色いとあはれに 御前の前栽枯れ枯れに 虫の音も鳴きかれて 紅葉のやうやう色づくほど 絵に描きたるやうにおもしろきを見わたして 心よりほかにをかしき交じらひかなと かの夕顔の宿りを思ひ出づるも恥づかし
04152/難易度:☆☆☆
ゆふぐれ/の/しづか/なる/に そら/の/けしき/いと/あはれ/に おまへ/の/せんさい/かれがれ/に むし/の/ね/も/なき/かれ/て もみぢ/の/やうやう/いろづく/ほど ゑ/に/かき/たる/やう/に/おもしろき/を/みわたし/て こころ/より/ほか/に/をかしき/まじらひ/かな/と かの/ゆふがほ/の/やどり/を/おもひ/いづる/も/はづかし
夕暮れの静けさにくわえ、空の様子はしみじみと心にしみ、お庭の植込みは枯れ枯れなうえに、虫の鳴き声までが鳴きかれ、紅葉がようやく色づいてゆく様子など、絵に描いたように心惹かれる景色を見渡して、夢にも思わぬ風情のある宮仕えだなと、あの夕顔の咲く五条の暮らしを思い出すさえ気のひけるすばらしさである。
夕暮の静かなるに 空の気色いとあはれに 御前の前栽枯れ枯れに 虫の音も鳴きかれて 紅葉のやうやう色づくほど 絵に描きたるやうにおもしろきを見わたして 心よりほかにをかしき交じらひかなと かの夕顔の宿りを思ひ出づるも恥づかし
大構造と係り受け
古語探訪
心よりほかに 04152
思いがけぬ。
交じらひ 04152
宮仕え。
かの夕顔の宿り 04152
五条の宿での生活。「やどり」は宿自体もさすが、その宿で過ごすこと、この場合は暮らしを意味する。