君はいささか隙あり 夕顔11章04

2021-04-25

原文 読み 意味

君は いささか隙ありて思さるる時は 召し出でて使ひなどすれば ほどなく交じらひつきたり 服 いと黒くして 容貌などよからねど かたはに見苦しからぬ若人なり

04134/難易度:☆☆☆

きみ/は いささか/ひま/あり/て/おぼさ/るる/とき/は めし/いで/て/つかひ/など/すれ/ば ほど/なく/まじらひ/つき/たり ぶく/いと/くろく/し/て かたち/など/よから/ね/ど かたは/に/みぐるしから/ぬ/わかうど/なり

君は、病状がいくぶんましなようにお感じの時には、右近を召し出してご用を言いつけなどなさるので、ほどなく他の女房とも馴染みここの暮らしに馴れてきた。喪服は濃い黒を着ており、顔立ちなどよくはないが、不器量で見ていられないほどではない若い人である。

君は いささか隙ありて思さるる時は 召し出でて使ひなどすれば ほどなく交じらひつきたり 服 いと黒くして 容貌などよからねど かたはに見苦しからぬ若人なり

大構造と係り受け

古語探訪

隙ありて思さるる 04134

「隙」は、容態がずっと一定して悪いのではなく、病状に波があり、しばらくの間よくなっている状態のこと。病気のあいまの意味。病気が回復状態にあって、気分が楽だというのではない点で注意したい。諸注の訳文では、もう病気がよくなったのかと思われるようなものがある。「て思さるる」の「て」は、~のようであるとの意味。知覚の対象を表すと説明される。

交じらひつきたり 04134

「交じらひ」は他人と交じらうことであるが、この語が使われる文脈は、宮仕えの場面である。「つき」は馴れることであり、落ち着くこと、居つくこと。「交じらひつき」で、諸注にある通り、勤めになれることを言うのだが、現代語で勤めという場合、生活の場と切り離された仕事場の意識が働く。しかし、住み込みで働く女房たちにとって、生活と勤めの切れ目は今と随分違うであろう。勤めになれるというだけでは古語とずれる感じがしたので、二条院の暮らしにも馴れと訳を補った次第。

服 04134

喪服。喪服の色には親疎により黒と鈍色(薄墨色)があった。

かたはに見苦しからぬ 04134

「ぬ」は「かたは(不器量)」でなく、「見苦し」くもなくと、両方の語にかかる。

Posted by 管理者