内裏にも聞こしめし 夕顔11章02
原文 読み 意味
内裏にも 聞こしめし 嘆くこと限りなし 御祈り 方々に隙なくののしる 祭 祓 修法など 言ひ尽くすべくもあらず 世にたぐひなくゆゆしき御ありさまなれば 世に長くおはしますまじきにやと 天の下の人の騷ぎなり
04132/難易度:☆☆☆
うち/に/も きこしめし なげく/こと/かぎりなし おほむ-いのり かたがた/に/ひま/なく/ののしる まつり はらへ すほふ/など いひ/つくす/べく/も/あら/ず よ/に/たぐひ/なく/ゆゆしき/おほむ-ありさま/なれ/ば よ/に/ながく/おはします/まじき/に/や/と あめのした/の/ひと/の/さわぎ/なり
帝までもがお聞きおよびになり、お嘆きになるご様子は限りがない。ご祈祷が方々の寺院で絶えず大々的に行われる騒ぎとなる。祭礼やお祓いや修法など、言い尽くすべくもない。君は世に比類なく不吉なまでにお美しいお姿なので、この世に長くいられないさだめではと、天下を揺るがす騒ぎである。
内裏にも 聞こしめし 嘆くこと限りなし 御祈り 方々に隙なくののしる 祭 祓 修法など 言ひ尽くすべくもあらず 世にたぐひなくゆゆしき御ありさまなれば 世に長くおはしますまじきにやと 天の下の人の騷ぎなり
大構造と係り受け
古語探訪
内裏 04132
具体的には帝。
方々に 04132
方々の寺院に。
ののしる 04132
人知れず加持祈祷をしたのではなく、人目につくほど大々的にの意味。結果としてそれほどの騒ぎとなったとの意味にはなるが、大騒ぎしながら祈祷をするのではない。「祭」「祓」は神道や陰陽道のもので、「修法」は仏教。
世にたぐひなくゆゆしき御ありさま 04132
これまでにも繰り返されてきた、光のこの世的でない美しさに対する、早世の不安。
天の下の人の騒ぎ 04132
国家を揺るがす大騒ぎをいう。「薄雲」の帖で、葵の父である左大臣が、右大臣方の勢力が強すぎるようになり、しばらく政界から退いた際、「天の下の騒ぎ」となったとある。