手をとらへて我に今 夕顔10章14
原文 読み 意味
手をとらへて 我に 今一度 声をだに聞かせたまへ いかなる昔の契りにかありけむ しばしのほどに 心を尽くしてあはれに思ほえしを うち捨てて 惑はしたまふが いみじきこと と 声も惜しまず 泣きたまふこと 限りなし
04122/難易度:☆☆☆
て/を/とらへ/て われ/に いま/ひとたび/こゑ/を/だに/きか/せ/たまへ いかなる/むかし/の/ちぎり/に/か/あり/けむ しばし/の/ほど/に こころ/を/つくし/て/あはれ/に/おもほエ/し/を うち-すて/て まどはし/たまふ/が いみじき/こと と こゑ/も/をしま/ず なき/たまふ/こと かぎりなし
その手をとらえて、「もう一度、声だけでもお聞かせください。どんな前世の因縁だったのか、わずかなあいだに、心の底からいとしく思われたものを、なのにうち捨て、どうにもならなくしてしまわれるとは、あまりにひどい」と、声もおしまずお泣きになる様子は限りもない。
手をとらへて 我に 今一度 声をだに聞かせたまへ いかなる昔の契りにかありけむ しばしのほどに 心を尽くしてあはれに思ほえしを うち捨てて 惑はしたまふが いみじきこと と 声も惜しまず 泣きたまふこと 限りなし
大構造と係り受け
古語探訪
だに 04122
せめて…だけでも。
しばしのほどに 04122
通りがかりに歌を交し合ったことからはじまり、ほんの短い期間に。
思ほえし 04122
自然とそう思われた。