時々中垣のかいま見 夕顔01章19
原文 読み 意味
時々 中垣のかいま見しはべるに げに若き女どもの透影見えはべり 褶だつもの かことばかり引きかけて かしづく人はべるなめり 昨日 夕日のなごりなくさし入りてはべりしに 文書くとてゐてはべりし人の顔こそいとよくはべりしか もの思へるけはひして ある人びとも忍びてうち泣くさまなどなむ しるく見えはべると聞こゆ
04019/難易度:☆☆☆
ときどき/なかがき/の/かいまみ/し/はべる/に げに/わかき/をむな-ども/の/すきかげ/みエ/はべり しびら/だつ/もの かこと/ばかり/ひき-かけ/て かしづく/ひと/はべる/な/めり きのふ ゆふひ/の/なごり/なく/さし-いり/て/はべり/し/に ふみ/かく/とて/ゐ/て/はべり/し/ひと/の かほ/こそ/いと/よく/はべり/しか もの/おもへ/る/けはひ/し/て ある/ひとびと/も/しのび/て/うち-なく/さま/など/なむ しるく/みエ/はべる と/きこゆ
時々、中垣からかいま見ますに、話の通り、若い女たちの透影が見えます。褶(シビラ)のようなものを申し訳みたいに羽織って、主人に仕える者もいるようです。昨日、夕日が部屋中にさしこみましたときに、手紙を書こうとして座っていた女の顔は、実に美しいものでしたが、ひどい悩みがあるらしくて、みなつい忍び泣きする様子など、はっきりと見てとれました」と申し上げる。
時々 中垣のかいま見しはべるに げに若き女どもの透影見えはべり 褶だつもの かことばかり引きかけて かしづく人はべるなめり 昨日 夕日のなごりなくさし入りてはべりしに 文書くとてゐてはべりし人の顔こそいとよくはべりしか もの思へるけはひして ある人びとも忍びてうち泣くさまなどなむ しるく見えはべると聞こゆ
大構造と係り受け
古語探訪
褶 04019
練らない夏用の薄い絹。
こそ……しか 04019
下に逆接として続く。美しかったが、声を殺してつい泣いていたと続く。
しるく 04019
はっきりと。