おぼえこそ重かるべ 夕顔01章20

2021-04-13

原文 読み 意味

おぼえこそ重かるべき御身のほどなれど 御よはひのほど 人のなびきめできこえたるさまなど思ふには 好きたまはざらむも 情けなくさうざうしかるべしかし 人のうけひかぬほどにてだに なほ さりぬべきあたりのことは 好ましうおぼゆるものを と思ひをり

04020/難易度:☆☆☆

おぼエ/こそ/おもかる/べき/おほむ-み/の/ほど/なれ/ど おほむ-よはひ/の/ほど ひと/の/なびき/めで/きこエ/たる/さま/など/おもふ/に/は すき/たまは/ざら/む/も なさけなく/さうざうしかる/べし/かし ひと/の/うけひか/ぬ/ほど/に/て/だに なほ さりぬべき/あたり/の/こと/は このましう/おぼゆる/もの/を と/おもひ/をり

世間の評判こそ重くて当然であるご身分ではあるけれど、そのご年齢にしても、女たちが慕いほめそやし申し上げるご様子などを勘案すると、女遊びをなさらないのも情にかけ、もの足りないことでしょうし、世間が許さぬ身分の者でさえ、やはり、惚れずにおれない美人には、心ひかれてしまうものだから、なおのこと評判のよい君ではと、惟光は考えを進める。

おぼえこそ重かるべき御身のほどなれど 御よはひのほど 人のなびきめできこえたるさまなど思ふには 好きたまはざらむも 情けなくさうざうしかるべしかし 人のうけひかぬほどにてだに なほ さりぬべきあたりのことは 好ましうおぼゆるものを と思ひをり

大構造と係り受け

古語探訪

おぼえ 04020

世間の評判。

情なく 04020

人としての情愛に欠ける。

さうぞうしかる 04020

ものたりないだろう。

人のうけひかぬほど 04020

「おぼえこそ重かるべき御身のほど」の対比。そうすることを世間が認めないほど身分の卑しい者。

さりぬべき 04020

「さありぬべき」の略で、そうあるのが当然、避けられないの意味。惚れずにいられないような美人の意味。夕日を浴びて手紙を書きながら泣いていた美人の夕顔を念頭に惟光は想像している。私だって惚れ兼ねないということ。後に、自分にだって言い寄るチャンスはあったが、光に譲ったのだとの意識につながってゆく。

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