またの日上にさぶら 末摘花09章15
目次
原文 読み 意味
またの日 上にさぶらへば 台盤所にさしのぞきたまひて くはや 昨日の返り事 あやしく心ばみ過ぐさるる とて 投げたまへり 女房たち 何ごとならむと ゆかしがる
06145/難易度:☆☆☆
またのひ うへ/に/さぶらへ/ば だいばんどころ/に/さし-のぞき/たまひ/て くはや きのふ/の/かへりごと あやしく/こころばみ/すぐさ/るる とて なげ/たまへ/り にようばう-たち なにごと/なら/む/と ゆかしがる
次の日、命婦が宮仕えしていると、光の君が台盤所に顔をのぞかせられて、さあ、きのうの返事、何とも気づかいで骨が折れたよと、投げてよこされた。女房たちは、なんだろうと、様子を知りたがった。
またの日 上にさぶらへば 台盤所にさしのぞきたまひて くはや 昨日の返り事 あやしく心ばみ過ぐさるる とて 投げたまへり 女房たち 何ごとならむと ゆかしがる
大構造と係り受け
古語探訪
上にさぶらへば 06145
主語は大輔命婦(たいふのみょうぶ)。帝づきの女房のため、清涼殿で宮仕えしている。
台盤所 06145
清涼殿の西廂(にしのひさし)にある女房たちの詰所。
くはや 06145
相手に注意を促す語。
あやしく 06145
自分でもわけがわからないほど。「心ばみ過ぐし」にかかる。
心ばみ過ぐし 06145
「ばむ」は、うっすらとそのような様子がうかがえる状態になること。心、つまり、愛情があるかのように見せる。「過ぐし」は時間をかける意味と、度を過ごす意味と両様にとれる。末摘花に対して、その気はないが、表面上はそう思われないように気遣いしたことをほのめかしている。現代の感覚からは非難されることかもしれないが、光源氏の愛情の示し方であろう。