おぼつかなくもて離 末摘花03章11

2021-05-11

原文 読み 意味

おぼつかなく もて離れたる御けしきなむ いと心憂き 好き好きしき方に疑ひ寄せたまふにこそあらめ さりとも 短き心ばへつかはぬものを 人の心ののどやかなることなくて 思はずにのみあるになむ おのづからわがあやまちにもなりぬべき 心のどかにて 親はらからのもてあつかひ恨むるもなう 心やすからむ人は なかなかなむらうたかるべきを とのたまへば

06039/難易度:☆☆☆

おぼつかなく もて-はなれ/たる/みけしき/なむ いと/こころうき すきずきしき/かた/に/うたがひ/よせ/たまふ/に/こそ/あら/め さりとも みじかき/こころばへ/つかは/ぬ/もの/を ひと/の/こころ/の/のどやか/なる/こと/なく/て おもは/ず/に/のみ/ある/に/なむ おのづから/わが/あやまち/に/も/なり/ぬ/べき こころのどか/に/て おや/はらから/の/もて-あつかひ/うらむる/も/なう こころやすから/む/ひと/は なかなか/なむ/らうたかる/べき/を と/のたまへ/ば

「心配なくらい無視なさるご様子がとてもつらいのです。きっと、多情な恋愛だと、疑いを挟んでおいででしょうが。そうであっても、すぐに途絶える愛情は持ち合わせていませんのに。先方の心がのどやかでじっと待つことがなくて、思いも寄らぬことばかり起こるので、自然とわたしの過ちだというように、これまではなってしまったようなのです。心がのんびりしていて、親兄弟が口をはさみ何かとうるさくすることもなく、気安そうな人は、貧しくともかえって守ってやりたくなるはずだが」とおっしゃるので、

おぼつかなく もて離れたる御けしきなむ いと心憂き 好き好きしき方に疑ひ寄せたまふにこそあらめ さりとも 短き心ばへつかはぬものを 人の心ののどやかなることなくて 思はずにのみあるになむ おのづからわがあやまちにもなりぬべき 心のどかにて 親はらからのもてあつかひ恨むるもなう 心やすからむ人は なかなかなむらうたかるべきを とのたまへば

大構造と係り受け

古語探訪

さりとも 06039

そうであっても、すなわち、「すきずきしき方」ではあっても。つまり、正式な結婚でないことを光も認めている。しかし、長く面倒を見るつもりであって、性交渉だけが目的ではない。それが「短き心ばへつかはぬ」、つまり、短期で終わる愛情は注がない、自分の愛情は長続きするのだ、ということ。これまでは、相手の女性の方が短気なために、結果的に短く終わり、自分の過ちのように世間で言ってきた。そういうことを気にして末摘花は、返事を寄越さないのであろう心配しているのである。

思はずにのみあるに 06039

予期せぬことばかり起こる。つまり、恋愛当初は、女がそんなに短気だとは思わなかったのに、光がちょっとよそへ通ったりしたら嫉妬を起こし、あれこれ予期せぬ面倒が起こった。

なかなかなむらうたかるべきを 06039

「心のどかな」であれば、うるさい親兄弟がなく、家が栄えていなくてもという含みが、「なかなか(かえって)」の意味。

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