頼もしき人なき御あ 末摘花08章15
原文 読み 意味
頼もしき人なき御ありさまを 見そめたる人には 疎からず思ひむつびたまはむこそ 本意ある心地すべけれ ゆるしなき御けしきなれば つらう など ことつけて
朝日さす軒の垂氷は解けながらなどかつららの結ぼほるらむ
とのたまへど ただ むむ とうち笑ひて いと口重げなるもいとほしければ 出でたまひぬ
06121/難易度:☆☆☆
たのもしき/ひと/なき/おほむ-ありさま/を みそめ/たる/ひと/に/は うとから/ず/おもひ/むつび/たまは/む/こそ ほい/ある/ここち/す/べけれ ゆるし/なき/みけしき/なれ/ば つらう など ことつけ/て
あさひ/さす/のき/の/たるひ/は/とけ/ながら/などか/つらら/の/むすぼほる/らむ
と/のたまへ/ど ただ/む/む と/うち-わらひ/て いと/くち/おもげ/なる/も/いとほしけれ/ば いで/たまひ/ぬ
「力になっていただけるお方もないご様子なのに、おつきあいをはじめたわたくしには、遠慮なく思い、親しんでいただくことこそ本望だと思われますが、かたく鎖していらっしゃるお心ゆえに、つらく」などと口実にして、
《真っ赤な朝日がさす軒にさがったつららは解けるのに どうしてあなたの心は池に張った氷のように鎖していらっしゃるのだろう》
と、おっしゃるが、ただむむと笑い、とても口が重そうなのもお気の毒なので、出ていらしゃった。
頼もしき人なき御ありさまを 見そめたる人には 疎からず思ひむつびたまはむこそ 本意ある心地すべけれ ゆるしなき御けしきなれば つらう など ことつけて
朝日さす軒の垂氷は解けながらなどかつららの結ぼほるらむ
とのたまへど ただ むむ とうち笑ひて いと口重げなるもいとほしければ 出でたまひぬ
大構造と係り受け
古語探訪
ことつけて 06121
人にことづけるではなく、それを口実にして。
朝日さす 06121
鼻の赤さを皮肉る。
垂氷 06121
今のつららの意味で、垂れた鼻の見立てでもある。
つらら 06121
池に張った氷。「つらうなどことつけて」の「つらう」を掛ける。
いとほしけれ 06121
口重さには寒さも加わっているので、見ていて気の毒に感じていることを表す。