見ぬやうにて外の方 末摘花08章04
原文 読み 意味
見ぬやうにて 外の方を眺めたまへれど 後目はただならず いかにぞ うちとけまさりの いささかもあらばうれしからむ と思すも あながちなる御心なりや
06110/難易度:☆☆☆
み/ぬ/やう/にて と/の/かた/を/ながめ/たまへ/れ/ど しりめ/は/ただ/なら/ず いかに/ぞ うちとけ/まさり/の いささか/も/あら/ば/うれしから/む と/おぼす/も あながち/なる/みこころ/なり/や
君はそちらを見ないようにして外の景色をご覧になられるが、横目は頻繁に動かし、どうだろう、ともに一夜を過ごしたことで、心の隔てがすこしでも解ければうれしいことだがとお考えになるのも、ご無理な注文というものか。
見ぬやうにて 外の方を眺めたまへれど 後目はただならず いかにぞ うちとけまさりの いささかもあらばうれしからむ と思すも あながちなる御心なりや
大構造と係り受け
古語探訪
後目はただならず 06110
中止法。「思す」にかかる連用法でなく、「ただならず遣ひ」などが省略されている。
うちとけまさり 06110
うちとける程度がまさる意味にもとれるが、「みまさる」が見る前の期待より、逢ったあとがすぐれていることを示すように、交情を重ねることで以前よりもいささかでも二人の距離が縮まっていることを光は期待しているのである。それに対して、結果としてそんなことで改まる女君でないことを知っている語り手は、「あながちなる御心」と、光の期待を無理と評している。もちろん、その非難は光に対してではなく、カタパンの女君に対してである。