八月二十余日宵過ぐ 末摘花05章01
目次
原文 読み 意味
八月二十余日 宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに 星の光ばかりさやけく 松の梢吹く風の音心細くて いにしへの事語り出でて うち泣きなどしたまふ
06049/難易度:☆☆☆
はちぐわち/にじふ/よにち よひ/すぐる/まで/また/るる/つき/の/こころもとなき/に ほし/の/ひかり/ばかり/さやけく まつ/の/こずゑ/ふく/かぜ/の/おと/こころぼそく/て いにしへ/の/こと/かたり/いで/て うち-なき/など/し/たまふ
八月二十日過ぎ、夜更けまで月の出のない待ち遠しさに、星の光だけがさやかで、松の梢に吹く風の音が心細く、女君は昔のできごとを語り出し、ついお泣きになる。
八月二十余日 宵過ぐるまで待たるる月の心もとなきに 星の光ばかりさやけく 松の梢吹く風の音心細くて いにしへの事語り出でて うち泣きなどしたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
宵過ぐる 06049
夜が更ける。二十日余の月は、有明の月だから、実際には、夜明けにならないと月は出ない。
心もとなき 06049
月が出ない夜は闇夜であり、さびしい故常陸宮邸にいる末摘花は、心細いのである。
星の光ばかりさやけく 06049
星の光は、さみしさを和らげるばかりか、どうもさびしさを募らせるものとして作用しているようである。
いにしへの事 06049
亡くなった父宮のことや、かつての家の反映ぶりであろう。