例の隔てきこえたま 末摘花03章09
原文 読み 意味
例の 隔てきこえたまはぬ心にて しかしかの返り事は見たまふや 試みにかすめたりしこそ はしたなくて止みにしか と 憂ふれば さればよ 言ひ寄りにけるをや と ほほ笑まれて いさ 見むとしも思はねばにや 見るとしもなし と 答へたまふを 人わきしける と思ふに いとねたし
06038/難易度:☆☆☆
れい/の へだて/きこエ/たまは/ぬ/こころ/にて しかしか/の/かへりごと/は/み/たまふ/や こころみ/に/かすめ/たり/し/こそ はしたなく/て/やみ/に/しか と うれふれ/ば さればよ いひより/に/ける/を/や/と ほほゑま/れ/て いさ み/む/と/しも/おもは/ね/ば/に/や みる/と/しも/なし と いらへ/たまふ/を ひと/わき/し/ける/と/おもふ/に いと/ねたし
例の遠慮申し上げにならない心で、「しかじかに対する返事はご覧ですか。ためしにほのめかした手紙は、決まりが悪いまま終わってしまいました」と打ち明けると、案の定、言い寄っていたのだなと、ほほえみになりながら、「さあ、見ようとも思わないので、見てもいない」とお答えになるのを、差をつけられたと思うにつけ、とても癪にさわる。
例の 隔てきこえたまはぬ心にて しかしかの返り事は見たまふや 試みにかすめたりしこそ はしたなくて止みにしか と 憂ふれば さればよ 言ひ寄りにけるをや と ほほ笑まれて いさ 見むとしも思はねばにや 見るとしもなし と 答へたまふを 人わきしける と思ふに いとねたし
大構造と係り受け
古語探訪
かすめ 06038
明言を避け、それとなく思いをほのめかすこと。
はしたなくて止みにしか 06038
手紙への返事がなく、くどく機会もなく終わったこと。
言ひ寄りにけるをや 06038
「を」と「や」は、ともに詠嘆。
人わきしける 06038
人によって差別したこと。光には返事を書いたのに、自分には返事を寄越さないと頭中将は思ったのである。しかし、実際には、どちらへも返事をしていないのである。光は、「隔て」をつくる性格なので、頭中将のように、正直になんでもしゃべらない。