君たちはありつる琴 末摘花03章05

2021-05-11

原文 読み 意味

君たちは ありつる琴の音を思し出でて あはれげなりつる住まひのさまなども やう変へてをかしう思ひつづけ あらましごとに いとをかしうらうたき人の さて年月を重ねゐたらむ時 見そめて いみじう心苦しくは 人にももて騒がるばかりや わが心もさま悪しからむ などさへ 中将は思ひけり

06033/難易度:☆☆☆

きみ-たち/は あり/つる/きん/の/ね/を/おぼし/いで/て あはれげ/なり/つる/すまひ/の/さま/など/も やう/かへ/て/をかしう/おもひ/つづけ あらまし/ごと/に いと/をかしう/らうたき/ひと/の さて/としつき/を/かさね/ゐ/たら/む/とき みそめ/て いみじう/こころぐるしく/は ひと/に/も/もて-さわがる/ばかり/や わが/こころ/も/さま/あしから/む など/さへ ちゆうじやう/は/おもひ/けり

おふた方は、先の琴の音を思い出しになって、あわれを催す住まいの様子なども、見慣れおらず面白く思いつづけ、ひょっとして、心にしみるほど愛くるしい人が、あんなところで長年暮らしている折りに見初め、気も狂わんばかりに思い詰めたら、世間も騒ぎ立てるばかりに、自分の気持ちまで格好がつかないくらいになろうか、などとまで、中将は気を回すのだった。

君たちは ありつる琴の音を思し出でて あはれげなりつる住まひのさまなども やう変へてをかしう思ひつづけ あらましごとに いとをかしうらうたき人の さて年月を重ねゐたらむ時 見そめて いみじう心苦しくは 人にももて騒がるばかりや わが心もさま悪しからむ などさへ 中将は思ひけり

大構造と係り受け

古語探訪

君たち 06033

光と頭中将。

ありつる琴の音 06033

末摘花の演奏した琴の音。

あはれげなりつる住まひ 06033

「いといたう荒れわたりてさびしきところに」とあった。

あらましごとに 06033

実際にはありえない願望。

さて 06033

「あはれげなりつるい住まひ」を指すのではなく、頭中将が実際に見た末摘花の住まいを指す。

いみじう苦しくは 06033

思いが受け入れられず苦しむ時は、の意味。

ばかりや 06033

「や」は疑問。

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