君は誰ともえ見分き 末摘花02章21
原文 読み 意味
君は 誰ともえ見分きたまはで 我と知られじと 抜き足に歩みたまふに ふと寄りて ふり捨てさせたまへるつらさに 御送り仕うまつりつるは
もろともに大内山は出でつれど入る方見せぬいさよひの月
と恨むるもねたけれど この君と見たまふ
06025/難易度:☆☆☆
きみ/は たれ/と/も/え/みわき/たまは/で われ/と/しら/れ/じ/と ぬきあし/に/あゆみ/たまふ/に ふと/より/て ふりすて/させ/たまへ/る/つらさ/に おほむ-おくり/つかうまつり/つる/は
もろともに/おほうちやま/は/いで/つれ/ど/いる/かた/みせ/ぬ/いさよひ/の/つき
と/うらむる/も/ねたけれ/ど この/きみ/と/み/たまふ すこし/をかしう/なり/ぬ
君は男を誰とも見分けることがおできにならず、自分が誰かを知られまいと抜き足で歩き去ろうとなさるが、男がすっと寄って来て、
《ふり捨てて行かれました冷たさに対し 逆にお送り申しあげるとは いやはや ふたり一緒に宮中からは出て参ったのに 入って行く先を見せない あなたはそんないざよいの月ですね》
と、相手が恨み言を言っている様子も癪だけれど、頭中将の君だとおわかりになると、すこし面白くお感じになる。
君は 誰ともえ見分きたまはで 我と知られじと 抜き足に歩みたまふに ふと寄りて ふり捨てさせたまへるつらさに 御送り仕うまつりつるは
もろともに大内山は出でつれど入る方見せぬいさよひの月
と恨むるもねたけれど この君と見たまふ
大構造と係り受け
古語探訪
御送り仕うまつりつるは 06025
「は」を感動の助詞とする説があるが、「殊勝かな」等が省略されていると考える。
大内山 06025
宇多法皇の御所となった御室(仁和寺)の裏山から意味が転じて内裏の意味としてつかわれる。
恨むるもねたけれど 06025
「恨む」の主体は頭中将であり、「ねたけれど」の主体は光。