逢はぬ夜をへだつ 末摘花09章19
目次
原文 読み 意味
逢はぬ夜をへだつるなかの衣手に重ねていとど見もし見よとや
白き紙に 捨て書いたまへるしもぞ なかなかをかしげなる
06149/難易度:☆☆☆
あは/ぬ/よ/を/へだつる/なか/の/ころもで/に/かさね/て/いとど/み/も/し/み/よ/と/や
しろき/かみ/に すて/かい/たまへ/る/しも/ぞ なかなか/をかしげ/なる
《逢わずにいる間柄なので 互いの身を重ね合わせることもできず邪魔な衣の袖なのに さらに衣を重ねてお会いしようとなさるのですか》
白い紙に さらりとお書きのようになった書きぶりも、かえって風趣に富む。
逢はぬ夜をへだつるなかの衣手に重ねていとど見もし見よとや
白き紙に 捨て書いたまへるしもぞ なかなかをかしげなる
大構造と係り受け
古語探訪
へだつるなかの衣手 06149
裸で抱き合えないのを、邪魔な衣服のせいだとする。「衣だに中にありしは疎かなりき逢はぬ夜をさへ隔てつるかな《衣服にしってふたり仲には疎ましい 逢瀬の楽しみまで邪魔立して来たんだから》」(拾遺集 恋三 読み人知らず)。
衣手に重ねて 06149
「朔日の御よそひ/06136」に姫君が贈ってきた晴れ着を指す。「重ね」は衣装を重ねる、日を重ねる、体を重ねるなどの意味に、襲(かさね)の色目の掛詞。
見もし見よとや 06149
「見る」はsexをいう。邪魔な服を着たまま、ベッドに入っても仕方ないと、贈り物の服をネタに、末摘花のよそよそしさを揶揄する。