ただ梅の花の色のご 末摘花09章16

2021-05-17

原文 読み 意味

ただ梅の花の色のごと 三笠の山のをとめをば捨てて と 歌ひすさびて出でたまひぬるを 命婦は いとをかし と思ふ 心知らぬ人びとは なぞ 御ひとりゑみは と とがめあへり

06146/難易度:☆☆☆

ただ/むめ/の/はな/の/いろ/の/ごと みかさのやま/の/をとめ/を/ば/すて/て と うたひ/すさび/て/いで/たまひ/ぬる/を みやうぶ/は/いと/をかし/と/おもふ こころしら/ぬ/ひとびと/は なぞ おほむ-ひとりゑみ/は/と とがめ/あへ/り

ただ梅の花の色みたいな 三笠の山の娘を見捨ててと、口ずさみながら出て行かれたのを、命婦はおじょうずなことと感心した。歌の真意を知らない女房たちは、ひとり笑いだなんて、なによ、なによと、詰め寄るのだった。

ただ梅の花の色のごと 三笠の山のをとめをば捨てて と 歌ひすさびて出でたまひぬるを 命婦は いとをかし と思ふ 心知らぬ人びとは なぞ 御ひとりゑみは と とがめあへり

大構造と係り受け

古語探訪

ただ梅の花の色のごと 06146

衛門府の風俗「たたらめの花のごと 掻練(かいねり)好むや げに紫の色好むや」から。「たたら」は鍛冶、または鍛冶に使用する炉、また炉の炎の神。「たたらめ」は炉の神に仕える巫女。炉の形からホトが連想され、火処(ホト、女性器)の赤さから鼻の赤さをあてこすると解釈されている。おそらく、鼻の赤い女は陰部も赤いなどの俗諺があったのだろう。「ただうめ」は「たたらめ」の誤写か、光源氏の創作かは不明。掻練は赤。たたら・たたらめ・鼻・花・梅・掻練は、意識の上で縁語となる。

三笠の山のをとめ 06146

春日大社に仕える巫女。春日大社は、鍛冶で用いる槌の神、建御雷(たけみかづち)を祀るが、常陸の鹿島神社も同じ建御雷を祀るため、「三笠の山のをとめ」は、常陸宮の姫君である末摘花を連想させる。

をば捨てて 06146

「捨て」にも隠された意味があるように思われるが不明である。鹿島神社は旅の安全を祈る神社。末摘花を離れて遠くに行くことの暗示があるのかもしれない。「掻練好むや げに紫の色好むや」の主語は、風俗歌では「たたらめ」である末摘花であるが、「捨つ」の主体である光源氏と考えることも可能だ。であれば、末摘花を捨てて、紫のゆかりのもとに行くとの決意とも読み取れる。

心 06146

歌の心

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