まだほの暗けれど雪 末摘花08章03
原文 読み 意味
まだほの暗けれど 雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを 老い人ども笑みさかえて見たてまつる
はや出でさせたまへ あぢきなし 心うつくしきこそ など教へきこゆれば さすがに 人の聞こゆることをえいなびたまはぬ御心にて とかう引きつくろひて ゐざり出でたまへり
06109/難易度:☆☆☆
まだ/ほの-くらけれ/ど ゆき/の/ひかり/に/いとど/きよら/に/わかう/みエ/たまふ/を おイびと-ども/ゑみ/さかエ/て/み/たてまつる はや/いで/させ/たまへ あぢきなし こころ/うつくしき/こそ など/をしへ/きこゆれ/ば さすがに ひと/の/きこゆる/こと/を/え/いなび/たまは/ぬ/みこころ/にて とかう/ひき-つくろひ/て ゐざり/いで/たまへ/り
まだほの暗いけれども、君は雪の光をあびて、ますますきよらに若くお見えになるので、年配の女房たちは歓喜し満面に笑みをたたえ見惚れ申し上げる。「はやくお出ましなさいませ。わからないお方。素直なのが何より」などと女房たちが教え申し上げると、気は進まぬながらさすがに、人がすすめる意見をはねつけになれないご気性のため、あれこれ身繕いをして、君のもとにいざり出て行かれた。
まだほの暗けれど 雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを 老い人ども笑みさかえて見たてまつる
はや出でさせたまへ あぢきなし 心うつくしきこそ など教へきこゆれば さすがに 人の聞こゆることをえいなびたまはぬ御心にて とかう引きつくろひて ゐざり出でたまへり
大構造と係り受け
古語探訪
雪の光にいとどきよらに 06109
「光」と「きよら」は一種の縁語であり、光を形容する基調。この世の者とは思えない神々しさをふくむ。
笑みさかえ 06109
「さかえ」は咲くと同根、生命力をみなぎらせること。輝かしい光のこの世の者とは思われぬうつくしさに触れ、満面に笑みをたたえ歓喜している。光の光りは後光のイメージと重なっている。
あぢきなし 06109
光の誘いに物怖じしている女君のものわかりの悪さに対する非難。
心うつくしき 06109
素直さ、従順さ。
教へきこゆれ 06109
女房たちが女君に教える。