踏みあけたる跡もな 末摘花08章02
目次
原文 読み 意味
踏みあけたる跡もなく はるばると荒れわたりて いみじう寂しげなるに ふり出でて行かむこともあはれにて をかしきほどの空も見たまへ 尽きせぬ御心の隔てこそ わりなけれ と 恨みきこえたまふ
06108/難易度:☆☆☆
ふみ/あけ/たる/あと/も/なく はるばる/と/あれ/わたり/て いみじう/さびしげ/なる/に ふりいで/て/ゆか/む/こと/も/あはれ/に/て をかしき/ほど/の/そら/も/み/たまへ つき/せ/ぬ/みこころ/の/へだて/こそ わりなけれ と うらみ/きこエ/たまふ
人が踏み歩いた跡もなく、一面遠くまで雪の狼藉にあい、恐ろしいくらいに荒廃した感じであるのに、そのうえ姫をふり捨てて行くのもかわいそうな気がして、「趣深い折の空もごらんなさい。いつまでもお気持ちに距離をおいていらっしゃることこそ耐え難いものです」と恨み言を申しあげになる。
踏みあけたる跡もなく はるばると荒れわたりて いみじう寂しげなるに ふり出でて行かむこともあはれにて をかしきほどの空も見たまへ 尽きせぬ御心の隔てこそ わりなけれ と 恨みきこえたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
いみじう 06108
吹雪の力に対する畏れ。
寂しげなる 06108
家を見捨てる忍びなさ。
をかしき 06108
雪が積もってふだんと異なる情景にたいする興味。また、後朝(きぬぎぬ)の別れの場面に、空の景色を見やることは王朝の恋愛における一種のパターンである。
ほど 06108
程度でなく、時間。後朝の折であり、雪の積もった折である。
わりなけれ 06108
理解できず、対応に窮することの表明。