御車出づべき門はま 末摘花08章18
原文 読み 意味
御車出づべき門は まだ開けざりければ 鍵の預かり尋ね出でたれば 翁のいといみじきぞ出で来たる 娘にや 孫にや はしたなる大きさの女の 衣は雪にあひて煤けまどひ 寒しと思へるけしき 深うて あやしきものに火をただほのかに入れて袖ぐくみに持たり 翁 門をえ開けやらねば 寄りてひき助くる いとかたくななり 御供の人 寄りてぞ開けつる
06124/難易度:☆☆☆
みくるま/いづ/べき/かど/は まだ/あけ/ざり/けれ/ば かぎ/の/あづかり/たづね/いで/たれ/ば おきな/の/いと/いみじき/ぞ/いで/き/たる むすめ/に/や むまご/に/や はしたなる/おほきさ/の/をむな/の きぬ/は/ゆき/に/あひ/て/すすけ/まどひ さむし/と/おもへ/る/けしき ふかう/て あやしき/もの/に/ひ/を/ただ/ほのか/に/いれ/て/そで/ぐくみ/に/も/たり おきな かど/を/え/あけ/やら/ね/ば より/て/ひき-たすくる いと/かたくな/なり おほむ-とも/の/ひと より/て/ぞ/あけ/つる
お車を出すことになる門はまだ開けてなかったので、鍵の預かり人を尋ね呼び出したところ、たいそう老いたる翁が出て来た。その娘か孫か、はっきりしない年格好の女が、衣服は雪の白さのために煤け具合が目立ち、寒そうにしている様子がとてもひどくて、妙なものに火をほんの少し入れて袖で包むようにして持っている。翁が門を開け放てないために、側に寄って引くのを手伝う、とても見苦しい。君のお供の人が寄って行って開けた。
御車出づべき門は まだ開けざりければ 鍵の預かり尋ね出でたれば 翁のいといみじきぞ出で来たる 娘にや 孫にや はしたなる大きさの女の 衣は雪にあひて煤けまどひ 寒しと思へるけしき 深うて あやしきものに火をただほのかに入れて袖ぐくみに持たり 翁 門をえ開けやらねば 寄りてひき助くる いとかたくななり 御供の人 寄りてぞ開けつる
大構造と係り受け
古語探訪
はしたなる 06124
女が老人の娘とも孫とも、どっちつかずでわからないこと。
大きさ 06124
そうした年齢からくる体の大きさで、実際は、十何才といったところなのだろう。老人が年より老けているために、それくらいの年の少女が、娘とも孫とも見分けが付かないのである。
雪にあひて 06124
真っ白な雪のせいで。
まどひ 06124
程度がはなはだしいこと。
あやしきもの 06124
語り手が名も知らぬよくわからないもの。
寄りてひき助くる 06124
主語は、老人の(孫)娘。
いとかたくななり 06124
門を開けるのを手伝っている女の子の様子だが、門がかたくてなかなか開かないことも掛けているように思う。なかなか開かないために、光のお供の者までが開けるのを手伝うのである。