着たまへるものども 末摘花08章11
原文 読み 意味
着たまへるものどもをさへ言ひたつるも もの言ひさがなきやうなれど 昔物語にも 人の御装束をこそまづ言ひためれ 聴し色のわりなう上白みたる一襲 なごりなう黒き袿重ねて 表着には黒貂の皮衣 いときよらに香ばしきを着たまへり
06117/難易度:☆☆☆
き/たまへ/る/もの-ども/を/さへ/いひ/たつる/も もの-いひ/さがなき/やう/なれ/ど むかしものがたり/に/も ひと/の/おほむ-さうぞく/を/こそ/まづ/いひ/た/めれ ゆるしいろ/の/わりなう/うは/じらみ/たる/ひと/かさね なごり/なう/くろき/うちき/かさね/て うはぎ/に/は/ふるき/の/かはぎぬ/いと/きよら/に/かうばしき/を/き/たまへ/り
お召しになっている服装まで言い立てるのも、ひどく口の悪い感じがするが、昔物語にも人物の御装束を何よりさきに言っているようだから。ゆるし色である薄紫がなんともひどく白茶けた単衣に、全体にむらなく黒ずんだ袿を重ねて、上着には黒貂の皮衣の、とても光沢があり馥郁と香のかおるのをお召しになっていた。
着たまへるものどもをさへ言ひたつるも もの言ひさがなきやうなれど 昔物語にも 人の御装束をこそまづ言ひためれ 聴し色のわりなう上白みたる一襲 なごりなう黒き袿重ねて 表着には黒貂の皮衣 いときよらに香ばしきを着たまへり
大構造と係り受け
古語探訪
言ひさがなき 06117
口が悪い。
聴し色 06117
禁色の反対。禁色は色の濃い紫や赤色で、身分によりその使用が限定されていたが、薄い紫や薄い赤色は、誰が使用してもよかった。
きよら 06117
神々しさにつながる表現で、ここでは光沢をさすのだろう。