着たまへるものども 末摘花08章11

2021-05-12

原文 読み 意味

着たまへるものどもをさへ言ひたつるも もの言ひさがなきやうなれど 昔物語にも 人の御装束をこそまづ言ひためれ 聴し色のわりなう上白みたる一襲 なごりなう黒き袿重ねて 表着には黒貂の皮衣 いときよらに香ばしきを着たまへり

06117/難易度:☆☆☆

き/たまへ/る/もの-ども/を/さへ/いひ/たつる/も もの-いひ/さがなき/やう/なれ/ど むかしものがたり/に/も ひと/の/おほむ-さうぞく/を/こそ/まづ/いひ/た/めれ ゆるしいろ/の/わりなう/うは/じらみ/たる/ひと/かさね なごり/なう/くろき/うちき/かさね/て うはぎ/に/は/ふるき/の/かはぎぬ/いと/きよら/に/かうばしき/を/き/たまへ/り

お召しになっている服装まで言い立てるのも、ひどく口の悪い感じがするが、昔物語にも人物の御装束を何よりさきに言っているようだから。ゆるし色である薄紫がなんともひどく白茶けた単衣に、全体にむらなく黒ずんだ袿を重ねて、上着には黒貂の皮衣の、とても光沢があり馥郁と香のかおるのをお召しになっていた。

着たまへるものどもをさへ言ひたつるも もの言ひさがなきやうなれど 昔物語にも 人の御装束をこそまづ言ひためれ 聴し色のわりなう上白みたる一襲 なごりなう黒き袿重ねて 表着には黒貂の皮衣 いときよらに香ばしきを着たまへり

大構造と係り受け

古語探訪

言ひさがなき 06117

口が悪い。

聴し色 06117

禁色の反対。禁色は色の濃い紫や赤色で、身分によりその使用が限定されていたが、薄い紫や薄い赤色は、誰が使用してもよかった。

きよら 06117

神々しさにつながる表現で、ここでは光沢をさすのだろう。

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