あはれさも寒き年か 末摘花07章05
原文 読み 意味
あはれ さも寒き年かな 命長ければ かかる世にもあふものなりけりとて うち泣くもあり 故宮おはしましし世を などてからしと思ひけむ かく頼みなくても過ぐるものなりけりとて 飛び立ちぬべくふるふもあり
06100/難易度:☆☆☆
あはれ さも/さむき/とし/かな いのち/ながけれ/ば かかる/よ/に/も/あふ/もの/なり/けり とて うち-なく/も/あり こ-みや/おはしまし/し/よ/を などて/からし/と/おもひ/けむ かく/たのみ/なく/て/も/すぐる/もの/なり/けり とて とびたち/ぬ/べく/ふるふ/も/あり
「ああ、こうも寒い年とはな。命長ければ、こんな世にも会うものなんだな」と、つい泣き出す者がいる。「故宮がご生前の頃を、どうして辛いなどと思ったことか、こうも頼りない有様でもやって行けるものだったとは」と、今にも飛び立ってしまいそうにしている者もいる。
あはれ さも寒き年かな 命長ければ かかる世にもあふものなりけりとて うち泣くもあり 故宮おはしましし世を などてからしと思ひけむ かく頼みなくても過ぐるものなりけりとて 飛び立ちぬべくふるふもあり
大構造と係り受け
古語探訪
飛び立ちぬべく 06100
「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあれねば(世の中をつらいとか耐え難いとはおもっても飛んで出て行くわかにはいかないので、鳥ではないのだから)」(万葉集、山上憶良)による表現で、鳥でもないのに今にも飛んで逃げ出しそうな様子だの意味。飛び上がるとの訳があるが、それでは憶良の歌が生きない。