されどみづからは見 末摘花07章02
目次
原文 読み 意味
されど みづからは見えたまふべくもあらず 几帳など いたく損なはれたるものから 年経にける立ちど変はらず おしやりなど乱れねば 心もとなくて
06097/難易度:☆☆☆
されど みづから/は/みエ/たまふ/べく/も/あら/ず きちやう/など いたく/そこなは/れ/たる/ものから とし/へ/に/ける/たちど/かはら/ず おしやり/など/みだれ/ね/ば こころもとなく/て
しかし、姫ご自身は人に姿をお見せになりそうもなく、几帳などひどく痛んでしまっているものの、昔から置かれている場所に変わりなく、脇へ押しやるなど取り乱しがないため、ご様子を窺うこともできずもどかしくて。
されど みづからは見えたまふべくもあらず 几帳など いたく損なはれたるものから 年経にける立ちど変はらず おしやりなど乱れねば 心もとなくて
大構造と係り受け
古語探訪
されど 06097
諸注は「見えたまふべくもあらず」にかけるが、姫がご覧になれないために、「心もとなくて」(物足りなくて)にかかる。従って、「あらず」は終止形でなく、「心もとなくて」の理由を示す中止法であり、ここで文を終止すべきでない。
みづから 06097
末摘花。
見えたまふ 06097
現代語にしづらいが、「見る」の受け身「見ゆ」に尊敬語がついた形、従って、主語は末摘花。
ものから 06097
逆接、~であるものの。
年経にける立ちど変はらず 06097
故宮の在世時に何も変わらない、その具体例のひとつ。末摘花はその当時のまま、箱入り娘として育てられているので、外から見られないように几帳の位置を変えないし、姫自身も変えようとしない。なかなか象徴的な意味を取り得る一文。
心もとなくて 06097
姫を見ることができないためのもどかしさ。「心もとなくて」という光の心象と、女房が四五人いるという現実描写に関連が見えないため、ここで文を切る。