をかしうもあはれに 末摘花07章11
原文 読み 意味
をかしうもあはれにも やうかへて 心とまりぬべきありさまを いと埋れすくよかにて 何の栄えなきをぞ 口惜しう思す
06106/難易度:☆☆☆
をかしう/も/あはれ/に/も やう/かへ/て こころ/とまり/ぬ/べき/ありさま/を いと/うもれ/すくよか/にて なに/の/はエ/なき/を/ぞ くちをしう/おぼす
本来なら雪景色により、風流面へも愛情面へも、ふだんとはうって変わって、つい心がむかうあたりの様子であるのに、姫はひどく引きこもり無愛想で、何の関心も示さないとは、ひどく残念に思っておられる。
をかしうもあはれにも やうかへて 心とまりぬべきありさまを いと埋れすくよかにて 何の栄えなきをぞ 口惜しう思す
大構造と係り受け
古語探訪
をかしうもあはれにもやうかへて心とまりぬべきありさまを 06106
本来なら、こうした雪の日はふだんとは様子が違って、風流な気持ちもわき、情愛もこまやかになるはずだとの意味。この場所が普通と違って、興味深いとの意味ではない。分析的に説明する。「をかし」は雪への関心、「あはれ」は光への愛情。「をかしうも」は「心とまりぬべき」にかかり、心の止まる方面が「をかし」である。「ぬべき」は当然そうなる。「ありさま」は雪の有様。「を」は逆接。つまり、ふだんとうって変わった雪景色により、平安貴族の心を揺り動かし、風流面で愛情面で燃えるべきはずなのに。
すくよかに 06106
ぶっきらぼう。
栄え 06106
諸注では長所などの意味とされているが、この文脈には合わない。この「はえ」は「心映え」の「映え」で、心がそちらに向かうという意味であろう。関心、興味の意味である。雪景色に興味を示し、そうした心の動きが、男女の情愛に火をつけるはずなのに、そういうことに関心を示さないという文脈である。末摘花に目立つ特徴がないとの意味では、風流心をくすぐるはずなのにとの文脈が意味を失ってしまう。