事ども多く定めらる 末摘花06章04
原文 読み 意味
事ども多く定めらるる日にて 内裏にさぶらひ暮らしたまひつ
06075/難易度:☆☆☆
こと-ども/おほく/さだめ/らるる/ひ/にて うち/に/さぶらひ/くらし/たまひ/つ
決め事が多い日にあたったので、宮中に伺候しているうちに日を暮らしてしまわれた。
事ども多く定めらるる日にて 内裏にさぶらひ暮らしたまひつ
大構造と係り受け
古語探訪
事ども多く定めらるる日にて内裏にさぶらひ暮らしたまひつ 06075
女と最初の情事を終えた後は、引き続き三日間は通うのが恋愛の決まりである。それがない場合、一方的に捨てられたことになり、女にとってこれほど屈辱的なことはない。まして、末摘花は、今はうらぶれたとはいえ、王家の血を引く宮様である。これは述べられてはいないが、光を通して家を再興しようとの動きがあってもおかしくない。もっとも、宮家だけに表立ってそうはできないプライドがあろうが。ともあれ、光の心内では、とりあえず、三日通うことで正式な結婚という形を取らずにすんだという言い訳が立ったのである。もし、こうした公的な理由なしに、光が恣意的に通うことをやめていたら、相手が宮家でもあり、光の名望は地に落ちていたに違いない。対外的には正式な結婚を避けられ、末摘花に対しては公的な理由が設けられ、光個人としても通わずに済んだという、末摘花の立場はともかく、物語の筋としては実に見事な展開である。