うち笑ひていと若々 末摘花05章06
原文 読み 意味
うち笑ひて いと若々しうおはしますこそ 心苦しけれ 限りなき人も 親などおはしてあつかひ後見きこえたまふほどこそ 若びたまふもことわりなれ かばかり心細き御ありさまに なほ世を尽きせず思し憚るは つきなうこそ と教へきこゆ
06054/難易度:☆☆☆
うち-わらひ/て いと/わかわかしう/おはします/こそ こころぐるしけれ かぎりなき/ひと/も おや/など/おはし/て/あつかひ/うしろみ/きこエ/たまふ/ほど/こそ わかび/たまふ/も/ことわり/なれ かばかり/こころぼそき/おほむ-ありさま/に なほ/よ/を/つき/せ/ず/おぼし/はばかる/は つきなう/こそ と/をしへ/きこゆ
命婦はつい笑い出して、「なんともおぼこくいらっしゃるのが、見ていて痛々しい。この上ない身分のお方でも、親などいらして何くれとお世話申しあげになるうちは、世間知らずでいらっしゃるのも理由のあることだけれど、これほど頼りない身の上でいらっしゃるのに、なおも大人の出会いをやたらと恐れ憚るのは、状況に合わないことで」と、教え申し上げる。
うち笑ひて いと若々しうおはしますこそ 心苦しけれ 限りなき人も 親などおはしてあつかひ後見きこえたまふほどこそ 若びたまふもことわりなれ かばかり心細き御ありさまに なほ世を尽きせず思し憚るは つきなうこそ と教へきこゆ
大構造と係り受け
古語探訪
限りなき人 06054
身分がこの上なく高い人。末摘花は、故常陸の親王の娘であるから、薄いながら天皇の血を引いている。
かばかり心細き御ありさま 06054
貧しい末摘花の現実生活を指して言っている。かなり厳しい口調である。命婦が末摘花付きの女房であるなら、こうずけずけとは言えないだろう。ここにも、命婦の末摘花に対する冷たさが感じられる。すなわち、男を近づけろというにしても言い方があるだろうということ。
世を尽きせず思し憚る 06054
「世」は、男女の仲。「尽きせず」は、無性に、やたらと。「思し憚る」は、恐がり避けること。
つきなうこそ 06054
場違いである、つまり、いくら身分が高くても、貧しいのであれば、男にこびを売れという、かなりサディスティックな発言である。