命婦はいかならむと 末摘花05章23
目次
原文 読み 意味
命婦は いかならむ と 目覚めて 聞き臥せりけれど 知り顔ならじ とて 御送りに とも 声づくらず 君も やをら忍びて出でたまひにけり
06071/難易度:☆☆☆
みやうぶ/は いか/なら/む/と め/さめ/て きき/ふせ/り/けれ/ど しりがほ/なら/じ/とて おほむ-おくり/に/と/も こわづくら/ず きみ/も やをら/しのび/て/いで/たまひ/に/けり
命婦は、どうなることかと目を覚まし、耳をそばだて臥していたが、わけ知り顔はすまいと、お見送りせよとの合図もしない。君の方も邸からそっと出て行かれるのだった。
命婦は いかならむ と 目覚めて 聞き臥せりけれど 知り顔ならじ とて 御送りに とも 声づくらず 君も やをら忍びて出でたまひにけり
大構造と係り受け
古語探訪
いかならむ 06071
どうなることかの意味であって、どうなっているかとの意味ではない。「む」は未来。
知り顔ならじ 06071
「知らず顔」と対をなす。命婦は、光がうち呻いて出て来ただけど、その逢瀬が失敗に終わったことを悟ったのである。命婦にとって光は恋愛の男性として、好ましくもあり、傷つけられもしている相手である。傷つけられた者の痛みを知る者として、光の傷を知らぬように気遣うのである。
忍びて出でたまひにけり 06071
邸から出て行くこと。前の「夜深う出でたまひぬ」は末摘花の部屋から出て行くこと。同じことの繰り返しではない。先には部屋から出て、今は敷地内から外に出たのである。