年ごろ思ひわたるさ 末摘花05章14
原文 読み 意味
年ごろ思ひわたるさまなど いとよくのたまひつづくれど まして近き御答へは絶えてなし わりなのわざや と うち嘆きたまふ
06062/難易度:☆☆☆
としごろ/おもひ/わたる/さま/など いと/よく/のたまひ/つづくれ/ど まして/ちかき/おほむ-いらへ/は/たエて/なし わりな/の/わざ/や/と うち-なげき/たまふ
普段から思い続けておられるお気持ちなど、言葉巧みにお話しなされたが、これまでの手紙にもまして間近いご返答はまったくなさらない。この段になってひどい仕打ちだとついお嘆きになる。
年ごろ思ひわたるさまなど いとよくのたまひつづくれど まして近き御答へは絶えてなし わりなのわざや と うち嘆きたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
まして 06062
手紙でも返事がないのに、まして直に返事はもらえないの意味。
わりなのわざや 06062
道理に反する仕打ち。道理の合わないとは、命婦の導きにより夜這いは半ば成立しているのである。あとは、女が否と言うか、応じるかである。その返事がないのでは処置なしである。「わざ」ははっきりと意図のこもった行為。「わりなのわざや」に籠められた光の落胆を、読者は滑稽に思ってはいけない。プレイボーイが又も振られたといった光の軽さを読み取る場所ではない。ここでの話者は光を批判的に描いてはいない。光の落胆は当然であり、そのように話者は物語っているのである。