父親王おはしける折 末摘花04章05
原文 読み 意味
父親王おはしける折にだに 旧りにたるあたりとて おとなひきこゆる人もなかりけるを まして 今は浅茅分くる人も跡絶えたるに かく世にめづらしき御けはひの 漏りにほひくるをば なま女ばらなども笑み曲げて なほ聞こえたまへ と そそのかしたてまつれど あさましうものづつみしたまふ心にて ひたぶるに見も入れたまはぬなりけり
06047/難易度:☆☆☆
ちちみこ/おはし/ける/をり/に/だに ふり/に/たる/あたり/とて おとなひ/きこゆる/ひと/も/なかり/ける/を まして いま/は/あさぢ/わくる/ひと/も/あと/たエ/たる/に かく/よ/に/めづらしき/おほむ-けはひ/の もり/にほひ/くる/を/ば なま-をむな-ばら/など/も/ゑみまけ/て なほ/きこエ/たまへ/と そそのかし/たてまつれ/ど あさましう/もの-づつみ/し/たまふ/こころ/にて ひたぶる/に/み/も/いれ/たまは/ぬ/なり/けり
父宮がご存命の折でさえ、時勢に遅れた場所として、訪問申し上げる人もなかったというのに、まして、今ははびこる浅茅を分ける人もないのに、こうして世にまたとないお方が、よその女たちから漏れてお出でになるので、女房とも呼べない女房たちなども相好を崩し、おっくうでもご返事なさいまでと、お勧め申し上げるが、あきれるくらいひどい遠慮をなさる性格のため、まったくもって手紙に目も通されないのだった。
父親王おはしける折にだに 旧りにたるあたりとて おとなひきこゆる人もなかりけるを まして 今は浅茅分くる人も跡絶えたるに かく世にめづらしき御けはひの 漏りにほひくるをば なま女ばらなども笑み曲げて なほ聞こえたまへ と そそのかしたてまつれど あさましうものづつみしたまふ心にて ひたぶるに見も入れたまはぬなりけり
大構造と係り受け
古語探訪
漏りにほひくる 06047
「漏り」は、耳の留まった多くの女性の中から、この浅茅が家に漏れてくるというイメージ。「にほひ」は「御けはひ」の関連語。
なま女ばら 06047
女房として身分教養の低さを軽蔑して言った語。