06末摘花07

2020-05-24

末摘花 原文 06-109/06-131

109かの紫のゆかり 尋ねとりたまひて そのうつくしみに心入りたまひて 六条わたりにだに 離れまさりたまふめれば まして荒れたる宿は あはれに思しおこたらずながら もの憂きぞ わりなかりける ところせき御もの恥ぢを見あらはさむの御心も ことになうて過ぎゆくを またうちかへし 見まさりするやうもありかし 手さぐりのたどたどしきに あやしう 心得ぬこともあるにや 見てしがな と思ほせど けざやかにとりなさむもまばゆし 110うちとけたる宵居のほど やをら入りたまひて 格子のはさまより見たまひけり 111されど みづからは見えたまふべくもあらず 几帳など いたく損なはれたるものから 年経にける立ちど変はらず おしやりなど乱れねば 心もとなくて 御達四 五人ゐたり 112御台 秘色やうの唐土のものなれど 人悪ろきに 何のくさはひもなくあはれげなる まかでて人びと食ふ 113隅の間ばかりにぞ いと寒げなる女ばら 白き衣のいひしらず煤けたるに きたなげなる褶引き結ひつけたる腰つき かたくなしげなり 114さすがに櫛おし垂れて挿したる額つき 内教坊 内侍所のほどに かかる者どもあるはやと をかし 115かけても 人のあたりに近うふるまふ者とも知りたまはざりけり 116あはれ さも寒き年かな 命長ければ かかる世にもあふものなりけりとて うち泣くもあり 117故宮おはしましし世を などてからしと思ひけむ かく頼みなくても過ぐるものなりけりとて 飛び立ちぬべくふるふもあり 118さまざまに人悪ろきことどもを 愁へあへるを聞きたまふも かたはらいたければ たちのきて ただ今おはするやうにて うちたたきたまふ 119そそや など言ひて 火とり直し 格子放ちて入れたてまつる 120侍従は 斎院に参り通ふ若人にて この頃はなかりけり 121いよいよあやしうひなびたる限りにて 見ならはぬ心地ぞする 122いとど 愁ふなりつる雪 かきたれいみじう降りけり 123空の気色はげしう 風吹き荒れて 大殿油消えにけるを ともしつくる人もなし 124かの ものに襲はれし折思し出でられて 荒れたるさまは劣らざめるを ほどの狭う 人気のすこしあるなどに慰めたれど すごう うたていざとき心地する夜のさまなり 125をかしうもあはれにも やうかへて 心とまりぬべきありさまを いと埋れすくよかにて 何の栄えなきをぞ 口惜しう思す
126からうして明けぬるけしきなれば 格子手づから上げたまひて 前の前栽の雪を見たまふ 127踏みあけたる跡もなく はるばると荒れわたりて いみじう寂しげなるに ふり出でて行かむこともあはれにて をかしきほどの空も見たまへ 尽きせぬ御心の隔てこそ わりなけれと 恨みきこえたまふ 128まだほの暗けれど 雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを 老い人ども笑みさかえて見たてまつる 129はや出でさせたまへ あぢきなし 心うつくしきこそなど教へきこゆれば さすがに 人の聞こゆることをえいなびたまはぬ御心にて とかう引きつくろひて ゐざり出でたまへり 130見ぬやうにて 外の方を眺めたまへれど 後目はただならず 131いかにぞ うちとけまさりの いささかもあらばうれしからむ と思すも あながちなる御心なりや

末摘花 原文かな 06-109/06-131

「イ」:や行の「い」/「エ」:や行の「え」

かのむらさきのゆかり たづねとりたまひて そのうつくしみにこころいりたまひて ろくでうわたりにだに かれまさりたまふめれば ましてあれたるやどは あはれにおぼしおこたらずながら ものうきぞ わりなかりけると ところせきおほむ-ものはぢをみあらはさむのみこころも ことになうてすぎゆくを またうち-かへし みまさりするやうもありかし てさぐりのたどたどしきに あやしう こころえぬこともあるにや みてしがな とおもほせど けざやかにとりなさむもまばゆし うちとけたるよひゐのほど やをらいりたまひて かうしのはさまよりみたまひけり されど みづからはみエたまふべくもあらず きちやうなど いたくそこなはれたるものから としへにけるたちどかはらず おしやりなどみだれねば こころもとなくて ごたちし ごにんゐたり みだい ひそくやうのもろこしのものなれど ひとわろきに なにのくさはひもなくあはれげなる まかでてひとびとくふ すみのまばかりにぞ いとさむげなるをむな-ばら しろききぬのいひしらずすすけたるに きたなげなるしびらひき-ゆひつけたるこしつき かたくなしげなり さすがにくしおし-たれてさしたるひたひつき ないけうばう ないしどころのほどに かかるもの-どもあるはやと をかし かけても ひとのあたりにちかうふるまふものともしりたまはざりけり あはれ さもさむきとしかな いのちながければ かかるよにもあふものなりけり とて うち-なくもあり こ-みやおはしまししよを などてからしとおもひけむ かくたのみなくてもすぐるものなりけり とて とびたちぬべくふるふもあり さまざまにひとわろきこと-どもを うれへあへるをききたまふも かたはらいたければ たちのきて ただいまおはするやうにて うち-たたきたまふ そそや などいひて ひとりなほし かうしはなちていれたてまつる じじゆうは さいゐんにまゐりかよふわかうどにて このごろはなかりけり いよいよあやしうひなびたるかぎりにて みならはぬここちぞする いとど うれふなりつるゆき かき-たれいみじうふりけり そらのけしきはげしう かぜふきあれて おほとなぶらきエにけるを ともしつくるひともなし かの ものにおそはれしをりおぼしいでられて あれたるさまはおとらざめるを ほどのせばう ひとけのすこしあるなどになぐさめたれど すごう うたていざときここちするよるのさまなり をかしうもあはれにも やうかへて こころとまりぬべきありさまを いとうもれすくよかにて なにのはエなきをぞ くちをしうおぼす
からうしてあけぬるけしきなれば かうしてづからあげたまひて まへのせんさいのゆきをみたまふ ふみあけたるあともなく はるばるとあれわたりて いみじうさびしげなるに ふりいでてゆかむこともあはれにて をかしきほどのそらもみたまへ つきせぬみこころのへだてこそ わりなけれ と うらみきこエたまふ まだほの-くらけれど ゆきのひかりにいとどきよらにわかうみエたまふを おイびと-どもゑみさかエてみたてまつる はやいでさせたまへ あぢきなし こころうつくしきこそ などをしへきこゆれば さすがに ひとのきこゆることをえいなびたまはぬみこころにて とかうひき-つくろひて ゐざりいでたまへり みぬやうにて とのかたをながめたまへれど しりめはただならず いかにぞ うちとけまさりの いささかもあらばうれしからむ とおぼすも あながちなるみこころなりや

末摘花 現代語訳 06-109/06-131

あの藤壺のゆかりを尋ねあてお引き取りになり、その方を愛育することに専念なさって、六条の方面へさえ、いっそう心が離れてゆかれるようので、まして荒れたる末摘花の宿は、愛情をお感じになり、お手紙はなさるものの、気が進まないというのは致し方のないことであった。居たたまれないほどひどく恥じらうのその原因を見定めようとのお考えも、特にないまま時が経ってゆくのを、一方では思い直し、実際に見たら身勝りするようなこともあるではないか、手探りのたどたどしい逢瀬のゆえに、不思議と理解の及ばないことになったのか、正体を見てみたいとお考えにはなるが、真正面から当たるのも照れくさい、皆が寝ないでくつろいでいる夜分、そっと邸内にお入りになって、格子のすきからご覧になった。
しかし、姫ご自身は人に姿をお見せになりそうもなく、几帳などひどく痛んでしまっているものの、昔から置かれている場所に変わりなく、脇へ押しやるなど取り乱しがないため、ご様子を窺うこともできずもどかしくて。女房たちが四五人いた。御膳は青磁のような唐製の品物だけれど古くさく見た目が悪い上に、何の惣菜もなく哀れげな、姫からの下がり物をみな食べている。
隅の間ばかしにたいそう寒そうにしている女どもは、白い衣の言いようもなく煤けたのを着た上に、褶をくくりつけている腰の様子など、みっともなく愚かな感じである。そうは言っても、櫛をずれ落ちそうにしながらも挿している額の様子は、内教坊や内侍所なんかに、こんな格好の女房などいそうではないかと、面白がる。どうしたって、これが姫のお側近くに仕える女房たちだとは、思いも寄らないことであった。
「ああ、こうも寒い年とはな。命長ければ、こんな世にも会うものなんだな」と、つい泣き出す者がいる。
「故宮がご生前の頃を、どうして辛いなどと思ったことか、こうも頼りない有様でもやって行けるものだったとは」と、今にも飛び立ってしまいそうにしている者もいる。
さまざまにみっともない泣き言を訴えあっているのをお聞きになるのも、いたたまれない思いなので、いったん退き、たった今いらっしゃったようにして、格子をお叩きになる。
「あれまあ」など口にして、火を入れ直し、格子を開けてお入れ申し上げる。
侍従は、斎院へ出仕している若女房で、この頃は出外れていた。そのためますますたいそう田舎くさい女房ばかりだったため、君は見慣れない経験だというお気持ちになられる。
ますますもって、愁いの種であるらしい雪が、一面にひどく降るのだった。空は荒れ模様で、風が激しく吹き、寝室の灯は消えてしまったのに、明かりをつける人もいない。あの物の怪に襲われた時のことを思い出しになって、荒廃した様子はあちらに劣らない感じであるが、邸内が狭く、人気がすこしある点などに心を慰めになるが、不気味で、どうにも寝つかれそうにない夜の様子である。
本来なら雪景色により、風流面へも愛情面へも、ふだんとはうって変わって、つい心がむかうあたりの様子であるのに、姫はひどく引きこもり無愛想で、何の関心も示さないとは、ひどく残念に思っておられる。
やっとのことで夜が明けた様子なので、君は格子を手づからお上げになり、前庭の植込みの雪景色をごらんになる。人が踏み歩いた跡もなく、一面遠くまで雪の狼藉にあい、恐ろしいくらいに荒廃した感じであるのに、そのうえ姫をふり捨てて行くのもかわいそうな気がして、
「趣深い折の空もごらんなさい。いつまでもお気持ちに距離をおいていらっしゃることこそ耐え難いものです」と恨み言を申しあげになる。
まだほの暗いけれども、君は雪の光をあびて、ますますきよらに若くお見えになるので、年配の女房たちは歓喜し満面に笑みをたたえ見惚れ申し上げる。
「はやくお出ましなさいませ。わからないお方。素直なのが何より」などと女房たちが教え申し上げると、気は進まぬながらさすがに、人がすすめる意見をはねつけになれないご気性のため、あれこれ身繕いをして、君のもとにいざり出て行かれた。
君はそちらを見ないようにして外の景色をご覧になられるが、横目は頻繁に動かし、どうだろう、ともに一夜を過ごしたことで、心の隔てがすこしでも解ければうれしいことだがとお考えになるのも、ご無理な注文というものか。

末摘花 注釈 06-109/06-131

紫のゆかり 06-109

「紫」は藤壺を指し、「ゆかり」はその縁者、全体で紫の上のことを言う。「紫のゆかり」は「(その)うつくしみ」にかかる。

六条わたり 06-109

六条御息所のこと、それとは距離がひらく。

まして 06-109

六条御息所にも増して。「離れまさる」よりもひどい状態は何かを考えれば、「もの憂き」が浮かび上がる。

荒れたる宿 06-109

末摘花の住居。

あはれに思し 06-109

愛情は感じること。

おこたらず 06-109

手紙を絶やさない。この語は通うの意味もあるが、文脈上それではおかしい。なお、諸注は、「思しおこたらず」とするが、そのような連語は無理に作らない方が素直である。

わりなかりける 06-109

「ける」とあるので、地の文である。従って、青表紙の「わりなかりけると」と下につづけることはできない。ここに「と」が入ると、光の心内語になってしまうが、「ける」という詠嘆は、話者が主人公の感情を代弁する働きだから、心内語に入るのはおかしい。

ところせき御もの恥ぢ 06-109

窮屈な思いをさせるほどのひどい恥じらいよう。

見あらはさむ 06-109

正体を知ること。すなわち、他に男がいるのではないか(頭中将ではないかとの疑念が光にはある)との疑惑を解こうということ。

けざやかにとりなさむもまばゆし 06-109

灯火ではっきり見るなどの注があるが考えすぎだろう。ここは正面切って末摘花に相対するのを避け、物陰から透き見することにしたのである。「けざやかにとりなす」は、ことがはっきりするように処理すること。別に光りにあてることに限らない。

うちとけたる 06-110

女房たちが内輪だけで心を許し合っている状態。

やをら 06-110

そっと。

されど 06-111

諸注は「見えたまふべくもあらず」にかけるが、姫がご覧になれないために、「心もとなくて」(物足りなくて)にかかる。従って、「あらず」は終止形でなく、「心もとなくて」の理由を示す中止法であり、ここで文を終止すべきでない。

みづから 06-111

末摘花。

見えたまふ 06-111

現代語にしづらいが、「見る」の受け身「見ゆ」に尊敬語がついた形、従って、主語は末摘花。

ものから 06-111

逆接、~であるものの。

年経にける立ちど変はらず 06-111

故宮の在世時に何も変わらない、その具体例のひとつ。末摘花はその当時のまま、箱入り娘として育てられているので、外から見られないように几帳の位置を変えないし、姫自身も変えようとしない。なかなか象徴的な意味を取り得る一文。

心もとなくて 06-111

姫を見ることができないためのもどかしさ。「心もとなくて」という光の心象と、女房が四五人いるという現実描写に関連が見えないため、ここで文を切る。

御台 06-112

御膳。

秘色 06-112

庶民には使用できないものであるとされる青磁のこと。

人悪ろき 06-112

人目に悪い、不格好、不体裁の意味。品物そのものはよいが古くさい。これも、この家全体の隠喩となっている。「人わろきに」の「に」は添加、その上にの意味。この「に」は意外と多い用法であるので、留意したい。理由や逆接ととってしまう場合でも、添加と考える方がスムースであることが多い。なぜなら、添加は意味的には順接でも逆接でも通るため、順接か逆接かに限定しなくてすむ便利さがあり、またどちらかに限定しえないケースが多いからだ。

くさはひ 06-112

種類や材料をいい、ここは食材、食品をいう。

まかでて 06-112

姫からのお下がり。

隅の間ばかり 06-113

ちょっとわたしとしては解釈が詰め切れていない。おそらく部屋の隅の空間なのか、「隅の間」という部屋なのか、おそらく後者だと思うが。「ばかり」は、なんかにというニュアンス。「だけ」という限定ではない。

褶(しびら) 06-113

裳の一種。礼装の度が高い。この時間帯、姫の側で仕えていない女房であれば、もっとラフな格好をしていても良さそうなものである。

かたくなしげなり 06-113

不格好であるとの意味が、単に格好が悪いの意味ではなく、もともとは、頑な、頑迷などの意味であり、昔からの変わりなさに対する批判が籠もる表現である。

内教坊 06-114

舞楽の練習所。

内侍所 06-114

三種の神器である鏡を納めている場所、ともに古式を今に残す空間である。

かけても 06-115

否定と呼応し、強い否定を現す。

人のあたりに 06-1

姫のまわり。光は、命婦を通して末摘花に近づいたが、命婦は光つきの命婦であり、末摘花の女房でない。ここで初めて、末摘花の舞台裏、裏事情をかいま見るのである。

飛び立ちぬべく 06-117

「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあれねば(世の中をつらいとか耐え難いとはおもっても飛んで出て行くわかにはいかないので、鳥ではないのだから)」(万葉集、山上憶良)による表現で、鳥でもないのに今にも飛んで逃げ出しそうな様子だの意味。飛び上がるとの訳があるが、それでは憶良の歌が生きない。

火とり直し 06-119

蝋燭の灯に限定する必要はないと思う。寒さから暖を取る、火を燠し直すことも含まれていよう。

侍従 06-120

以前、光の歌に応じない末摘花に代わり、歌を返した若女房。ここに見える通り、侍従は、末摘花と斎院のふたりに仕えており、このように複数の主人に仕えるケースは珍しくはなかったようである。なお、侍従は溌剌とした若い女性であり、その侍従がいないことで、邸がいっそう暗い風に光には見えている。

愁ふなりつる雪 06-122

「あはれさも寒き年かな」などと寒さを女房が嘆いている雪。「なり」は伝聞。

かのものに襲はれし折 06-124

夕顔を亡くすことになった廃院の一夜。

荒れたるさまは劣らざめるをほどの狭う人気のすこしあるなど 06-124

廃院と末摘花の邸との比較。

いざとき 06-124

寝付けない様子。

をかしうもあはれにもやうかへて心とまりぬべきありさまを 06-125

本来なら、こうした雪の日はふだんとは様子が違って、風流な気持ちもわき、情愛もこまやかになるはずだとの意味。この場所が普通と違って、興味深いとの意味ではない。分析的に説明する。「をかし」は雪への関心、「あはれ」は光への愛情。「をかしうも」は「心とまりぬべき」にかかり、心の止まる方面が「をかし」である。「ぬべき」は当然そうなる。「ありさま」は雪の有様。「を」は逆接。つまり、ふだんとうって変わった雪景色により、平安貴族の心を揺り動かし、風流面で愛情面で燃えるべきはずなのに。

すくよかに 06-125

ぶっきらぼう。

栄え 06-125

諸注では長所などの意味とされているが、この文脈には合わない。この「はえ」は「心映え」の「映え」で、心がそちらに向かうという意味であろう。関心、興味の意味である。雪景色に興味を示し、そうした心の動きが、男女の情愛に火をつけるはずなのに、そういうことに関心を示さないという文脈である。末摘花に目立つ特徴がないとの意味では、風流心をくすぐるはずなのにとの文脈が意味を失ってしまう。

からうして 06-126

荒れた家屋と吹雪による恐怖心に加え、二人の距離が埋まらず、早くこの一夜を終わらせたいとの思いでいながら、遅々として夜が明けなかったことを示す。

いみじう 06-127

吹雪の力に対する畏れ。

寂しげなる 06-127

家を見捨てる忍びなさ。

をかしき 06-127

雪が積もってふだんと異なる情景にたいする興味。また、後朝(きぬぎぬ)の別れの場面に、空の景色を見やることは王朝の恋愛における一種のパターンである。

ほど 06-127

程度でなく、時間。後朝の折であり、雪の積もった折である。

わりなけれ 06-127

理解できず、対応に窮することの表明。

雪の光にいとどきよらに 06-128

「光」と「きよら」は一種の縁語であり、光を形容する基調。この世の者とは思えない神々しさをふくむ。

笑みさかえ 06-128

「さかえ」は咲くと同根、生命力をみなぎらせること。輝かしい光のこの世の者とは思われぬうつくしさに触れ、満面に笑みをたたえ歓喜している。光の光りは後光のイメージと重なっている。

あぢきなし 06-129

光の誘いに物怖じしている女君のものわかりの悪さに対する非難。

心うつくしき 06-129

素直さ、従順さ。

教へきこゆれ 06-129

女房たちが女君に教える。

後目はただならず 06-130

中止法。「思す」にかかる連用法でなく、「ただならず遣ひ」などが省略されている。

うちとけまさり 06-131

うちとける程度がまさる意味にもとれるが、「みまさる」が見る前の期待より、逢ったあとがすぐれていることを示すように、交情を重ねることで以前よりもいささかでも二人の距離が縮まっていることを光は期待しているのである。それに対して、結果としてそんなことで改まる女君でないことを知っている語り手は、「あながちなる御心」と、光の期待を無理と評している。もちろん、その非難は光に対してではなく、カタパンの女君に対してである。

2020-05-24

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