見たまふかぎりの人 空蝉02章07
原文 読み 意味
見たまふかぎりの人は うちとけたる世なく ひきつくろひ側めたるうはべをのみこそ見たまへ かくうちとけたる人のありさまかいま見などは まだしたまはざりつることなれば 何心もなうさやかなるはいとほしながら 久しう見たまはまほしきに 小君出で来る心地すれば やをら出でたまひぬ
03010/難易度:☆☆☆
み/たまふ/かぎり/の/ひと/は うちとけ/たる/よ/なく ひきつくろひ/そばめ/たる/うはべ/を/のみ/こそ/み/たまへ かく/うちとけ/たる/ひと/の/ありさま/かいまみ/など/は まだ/し/たまは/ざり/つる/こと/なれ/ば なにごころ/も/なう/さやか/なる/は/いとほし/ながら ひさしう/み/たまは/まほしき/に こぎみ/いで/くる/ここち/すれ/ば やをら/いで/たまひ/ぬ
君がお付き合いなさっている女性はみな、打ち解けて過ごす時がなく、つくろい立てたよそ行きの横顔ばかりご覧になっておいでだが、このように打ち解けた女の様を覗き見することなどは、これまでなされたためしのないことなので、何の用心もなく丸見えになのは心苦しいことながら、いつまでも見ていたいとお望みのところ、小君が出てくる感じがしたので、そっとその場をお立ちになった。
見たまふかぎりの人は うちとけたる世なく ひきつくろひ側めたるうはべをのみこそ見たまへ かくうちとけたる人のありさまかいま見などは まだしたまはざりつることなれば 何心もなうさやかなるはいとほしながら 久しう見たまはまほしきに 小君出で来る心地すれば やをら出でたまひぬ
大構造と係り受け
古語探訪
見たまふかぎりの人 03010
肉体関係にあるすべての女性。具体的には葵の上、藤壺、六条御息所などの上流貴族。
世 03010
時間。
側めたる 03010
横向きの姿勢。男女の関係にあっても上流階級の女性は、相手の男に正面から顔を見せない。
かいま見 03010
覗き見。男が女を見初めるもっともダイレクトな手立て。
何心もなう 03010
見られている方になんの用心もなく。
いとほし 03010
相手に対して悪いことをした・しているという心の咎め。
やをら 03010
そっと。