女も並々ならずかた 空蝉01章02
原文 読み 意味
女も 並々ならずかたはらいたしと思ふに 御消息も絶えてなし 思し懲りにけると思ふにも やがてつれなくて止みたまひなましかば憂からまし しひていとほしき御振る舞ひの絶えざらむもうたてあるべし よきほどに かくて閉ぢめてむと思ふものから ただならず ながめがちなり
03002/難易度:☆☆☆
をむな/も なみなみ/なら/ず/かたはらいたし/と/おもふ/に おほむ-せうそく/も/たエて/なし おぼし/こり/に/ける/と/おもふ/に/も やがて/つれなく/て/やみ/たまひ/な/ましか/ば/うから/まし しひて/いとほしき/おほむ-ふるまひ/の/たエ/ざら/む/も/うたて/ある/べし よき/ほど/に かくて/とぢめ/て/む/と/おもふ/ものから ただならず ながめがち/なり
女もひとかたならず居たたまれなさにさいなまれてならないのに、君からのお便りは絶えてない。お懲りになってしまわれたようだと思うにつけても、このままつれなく縁をお切りになってしまわれてはさぞつらかろう、が、申し訳ないながらもお受けできないご無理な振る舞いが絶えずつづくのも嘆かわしいことであろう、今をよい潮時にして、このまま幕引きにしてしまおうと思うものの、いつになく物思いにふけりがちである。
女も 並々ならずかたはらいたしと思ふに 御消息も絶えてなし 思し懲りにけると思ふにも やがてつれなくて止みたまひなましかば憂からまし しひていとほしき御振る舞ひの絶えざらむもうたてあるべし よきほどに かくて閉ぢめてむと思ふものから ただならず ながめがちなり
大構造と係り受け
古語探訪
かたはらいたし 03002
周囲に対して気が咎めること。この場合、光の愛を受け入れるべきでなかったのかとの王朝人の常識が彼女を周囲から孤立させいたたまれない思いに導く。かたはらいたしという感覚は、直接に光に申し訳ないというのではなく、漠然としたまわりに対しての感覚。
やがて 03002
そのまま。光が逢いに来ても逢わなかったあのままの状態で。
つれなくて 03002
無情に。
いとほしき 03002
相手の要求や希望に応じられず申し訳ないと思う気持ち。光に申し訳なく感じながらも応じられない振る舞いとの意味である。
ながめ 03002
視覚的には何かを見ているが焦点は対象に合わされておらず、自分の心の中を見つめている状態である。