こきむらさきのいろしあせずは 濃き紫の色し褪せずば 褪す あす 01-160

2021-05-16

祝いの席で、なぜ色あせることを想定したのか不思議である。ただ、この歌の予見は現実のものとなるのだから、作者の意図した歌であるはずだ。左大臣が光源氏に結びつけた元結の紐の色は紫であり、この歌と結びつく。しかし、紫は物語では「ゆかりの色」とされ、桐壺更衣、藤壺の宮、紫の上などに共通の色調であり、光源氏はこれを求めてやまない(今風に言えば、ある種のフェロモンか)。左大臣家にとっては残念ながら、葵の上には「紫のゆかり」の要素はないのである。
いま不思議としたが、これは登場人物の意図せぬ発言が、後に現実となってゆくという洋の東西を問わず悲劇に共通な手法で、幾度となく源氏物語の中で繰り返される手法である。言葉から事柄へ「(言=事)構造」と先にも名付け(/01-030と/01-031)たもので、今後も注意を喚起したい。


 結びつる心も深き元結ひに 濃き紫の色し褪せずは
と奏して 長橋より下りて 舞踏したまふ

結びつけたこちらの気持ちは深いものの元結の濃い紫色が褪せなければよいのですが、と奏上して、長橋から庭に下りてお礼の拝舞をなされる。

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