いでやかみのしなとおもふだにかたげなるよを いでや上の品と思ふだにかたげなる世を かたげなり かたげ 02-045

2021-05-21

理想の女性が「かたげなる(めったにいない)」と通例解釈されている。しかし、左馬頭の発言は理想の女性についてではない。「いでや」は議論に対して、そんなことはないとの反論。結局、左馬頭の話の論点をつかめ切れていないことからくるこしらえ訳になっている。左馬頭の話の焦点は、キーワードを拾い出せば自然とわかる。「人に知られず/02-041」「思ひの外に/02-041」「思ふより違へること/02-042」「思ひの外に/02-043」と、繰り返されている。中流の女には予想もしないこんないい女がいるんだとの話。これに対して、光源氏は予想外予想外と言うけど、上流の中にだって、予想外の女なんかめったにいるものではない(藤壺以外には)との意味になる。光源氏は藤壺の宮に対して「似る人なくもおはしけるかな/01-173」と感想を述べている。この議論の最中も、ぼんやりと藤壺のことだけを考えつづけ、議論には積極的に参加していない。この議論を聞いて中流女性に目覚めたと解釈されているが、言葉が事実になるという「(言=事)構造」の例ではあるものの、それは光源氏の意図せぬ結果であるように思う。


いでや 上の品と思ふにだに難げなる世を と君は思すべし

(光源氏)どうだか、上流貴族と思う女性の中にさえ予想を越えた女性はめったにいない世の中なのに、と若君はお思いのようである。

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