かくしあへず 隠しあへず かくしあえず 隠しあえず 02-008

2021-05-18

「あふ」には「お互い……しあう」の意味と、「最後までずっと……する」の二つの意味がある。どちらの意味で解釈するかにより、二人の関係はずいぶんちがってくる。前者であれば、二人は親密であるが、後者であればそれほどでもなくなる。すなわち、頭中将は心やすくふるまうが、光源氏の方からはどういう態度を示すのか書かれていないのだ。結論からすれば、「隠し通すことができない」の意味であり、「お互いに胸の中のことも包みきれず」は間違いである。雨夜の品定めにおいても、ぺらぺらやらかすのは頭中将であり、光は寡黙である。「なかに親しく馴れきこえたまひ/02-006」「心安く、なれなれしく/02-006」「うち連れきこえたまひ」「まつはれきこえたまふ」「かしこまりもえおかず」「隠しあへず」「睦れきこえたまひ」と、これらは一方的に頭中将から光源氏への動作である。ここでの光源氏の性格は他の帖といささか齟齬する向きがある。


里にても わが方のしつらひまばゆくして 君の出で入りしたまふにうち連れきこえたまひつつ 夜昼学問をも遊びをももろともにして をさをさ立ちおくれず いづくにてもまつはれきこえたまふほどに おのづからかしこまりもえおかず 心のうちに思ふことをも隠しあへずなむ 睦れきこえたまひける

実家においてもまた自分の身の回りのしたくをきらびやかにして光君の出入りなさるのにお伴申しては、昼夜となく学問をも遊びをも一緒にしてなかなか遅れを取らず、どのような場所にでも付き従い申しておいでなので、自然と遠慮もおかれず、心中思うことまでも隠しおおせぬほど仲睦まじくふるまい申し上げておられた。

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