かしこきみこころに かしこき御心に 賢き御心に 01-125
「かしこし」は、神意 霊力に対する畏敬の念を表し、そのような能力をもつ人にも使う。これまで光の君を親王にせず来たこと、そしてついに一世源氏になした叡慮に対して言う。01-125文内ではいろいろなところにかかりうる。ここでは最終的な帝の判断に対して「かしこき」と語り手が評したととっておく。
帝かしこき御心に 倭相を仰せて 思しよりにける筋なれば 今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを 相人はまことにかしこかりけりと思して 無品の親王の 外戚の寄せなきにては漂はさじ わが御世もいと定めなきを ただ人にて朝廷の御後見をするなむ 行く先も頼もしげなめること と思し定めて いよいよ道々の才を習はさせたまふに
帝はかしこき深慮から、倭流の人相見にご命じになり、ご自身がつとに案じておられた事柄なので、今までこの宮を親王にもなされなかったが、相人はまっこと神意を見抜いたものよと心に落ち、無品親王に付けたところで外戚の支援がない状態にはしておけまい。わが御世もいつまで続くかはなはだ当てにならぬものを。臣下として朝廷の補佐をすることこそが先々も頼もしかろうと、思い定められて、ますます諸般の学問をお習わせになったところ、