とげさせたてまつれ 遂げさせたてまつれ 遂げさせ奉れ 遂げさせたてまつる 01-069
父の遺言である本意を遂げさせるとは、宮仕えに出すことではなく、宮仕えを続けた結果帝の子を儲ける願いを中途半端に終わらせるなというもの。「させ」は使役で対象は「娘」、「たてまつる」は使役の対象である娘に対する敬意。父の思いではなく、娘の思いを遂げさせるのである。「故大納言の遺言あやまたず、宮仕への本意深くものしたりしよろこびは/01-088」とあるのも同じで、桐壺が帝に対する一途な思いに対する返礼。
生まれし時より思ふ心ありし人にて 故大納言いまはとなるまで ただこの人の宮仕への本意 かならず遂げさせたてまつれ 我れ亡くなりぬとて口惜しう思ひくづほるなと 返す返す諌めおかれはべりしかば
生まれた時から望みをかけてきた娘で、父の亡き大納言が今際(いまわ)の際まで、ただこの人を宮仕えへに出す宿願必ず遂げて差し上げよ。私が亡くなったとて不甲斐なく節を曲げてはならないと、返す返す諌めおかれましたから、