たえはて 絶えはて 絶え果て たえはつ 絶えはつ 絶え果つ 01-034

2021-04-13

亡くなることの婉曲表現として使われていることは明らかだが、一般にはこの意味では使用せず、和歌の中で「たまきはる命絶えぬれ」「玉の緒絶えなば絶えね」などの定型表現として使われるのが普通である。単独の表現としては強すぎる言葉で場面にそぐわない。この表現は先の桐壺更衣の歌「命なりけり」を受けた表現と考えると得心がゆく。歌で歌われたあの命の火もついに消えてしまわれたという感覚。それゆえ先にこの歌を聴いている必要があるので、この表現の主体は、ともに里下がりした更衣付きの女房と考えるのが妥当であろう。


御使の行き交ふほどもなきに なほいぶせさを限りなくのたまはせつるを 夜半うち過ぐるほどになむ絶えはてたまひぬる とて泣き騒げば 御使もいとあへなくて帰り参りぬ

付き添った使者が戻る時間でもないのに気詰まりをとめどなく口になさっておられたところ、夜中少しまわった頃、命が絶えてしまわれたと女房たちが泣き騒ぐので、使者もどうにもならず宮中に戻って来た。

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