めづらかなるちごのおんかたちなり めづらかなる稚児の御容貌なり めづらかなり 珍かなり めずらかなり 01-008
原文は「稚児の」を省き「御覧ずるにめづらかなるご容貌なり」で良さそうなものだが、そうはなっていない。また「稚児」を主語の位置に移し、「稚児(の は)めづらかなるご容貌なり」などでも落ち着きそうだが、そうはなっていない。「稚児の」をどうしてもこの位置に持ってきたいという語り手の意思を感じないではおれない。「めづらかなる」は「ご容貌」にかかると読むのが普通だが、「めづらかなる稚児」で固有なイメージを結んでいるのかも知れない。例えば、聖徳太子なんかが浮かぶ。ともあれイレギュラーな語順である。
いつしかと心もとながらせたまひて 急ぎ参らせて御覧ずるに めづらかなる稚児の御容貌なり
今か今かと帝は心もとないご様子で、里より急ぎ参らせご覧になったところ、御子は見たこともないめずらしい人相のお顔立ちだったのです。