やすからず 安からず 01-003

2021-04-13

身分の低い更衣ふぜいに出し抜かれた女御たちが心穏やかではないのはわかる。しかし、登場人物としてさして意味のない更衣たちの気持ちが穏やかであろうがなかろうが、どうでもよいはずなのに、この一文を挿入した狙いは何か、なぜ身分の低い更衣たちに対して「まして」が使われているのかを、読み取る必要がある。 「やすからず」を終止形と考えると、更衣たちの気持ちで終わってしまう。これを連用中止とみてみよう。 女御たちはおとしめそねむことで気持ちがおさまったが、更衣たちはそんなことでは気がおさまらず、直接的手段に訴えた?、と読める。 しばらく後のくだりで、「打橋渡殿のここかしこの道にあやしきわざをしつつ」とあり、また「馬道の戸を鎖しこめこなたかなた心を合はせてはしたなめわづらはせたまふ」と、陰険な仕打ちをしたことが語られる。前者は敬語がないことから更衣たちの行動とみてよく、後者は女御が主体であるが使役の「せ」があるので、実際の行動をとったのは更衣たちであったろう。これらのことと関係がありそうだが、通常の解釈では、たちの悪いいやがらせ程度であって、「まして」と断る理由がつかめない。これらに秘められた口をはばかる呪詛に関しては当該箇所で述べる。


同じほど それより下﨟の更衣たちは ましてやすからず

同じ位やそれより下位の更衣たちは、まして気が休まらず…。

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