こころもとなく 心もとなく こころもとなし 心もとなし 心許なし 02-055
気がかり。
容貌きたなげなく若やかなるほどの おのがじしは塵もつかじと身をもてなし 文を書けどおほどかに言選りをし 墨つきほのかに心もとなく思はせつつ またさやかにも見てしがなとすべなく待たせ わづかなる声聞くばかり言ひ寄れど 息の下にひき入れ言少ななるが いとよくもて隠すなりけり
(頭中将)器量がわるくなく若々しい年頃で、自分自身では塵ほどの難点もなきよう身を処し、手紙を書く場合にもおっとりした言葉を選び、墨色は心持ち薄く相手に気を持たせたり、また直接会いたいものだと詮ない思いで待たせ、か細い声を何とか聞こうと側に言い寄っても、息の下に声をひっこめ言葉数少ないのが、まっこと見事にアラを隠すものです。