をは こそ…已然形…をは 02-044
「相手の言葉に反発し、異論を差し挟む表現」、「一種の強めの意味」、「間投助詞「を」に詠嘆の終助詞「は」がついたもの」などと説明される。直前の「こそ……已然形」と呼応して「AにはだめでもBならいいじゃないか」という呼応関係で、最善ではないものの次善の提案とみておく。奈良時代には用例がなく、「をば」と濁音で発するのか不明。源氏物語では他に用例がない。
すぐれて疵なき方の選びにこそ及ばざらめ さる方にて捨てがたきものをは とて式部を見やれば わが妹どものよろしき聞こえあるを思ひてのたまふにやとや心得らむ ものも言はず
(左馬頭)特に瑕ひとつない女性をえらぶには及びはしなかろうが、これはこれで捨てがたいものではないか、と言って式部を見やると、自分の姉妹たちがなかなか評判高いのを念頭にしてお言いかと受け取っているらしい、ものも言わない。