えならぬ えならず 02-106
えも言われぬ(ほどすばらしい)。
菊を折りて 琴の音も月もえならぬ宿ながら つれなき人をひきやとめける 悪ろかめりなど言ひて 今ひと声 聞きはやすべき人のある時 手な残いたまひそなど いたくあざれかかれば
色の移ろった菊を折って、琴の音もよく月もさしこむ申し分ない宿なのですから、これまでつれない夫をひきとめて来たのでしょうね。どうやら分は悪そうに見えますなあ」などと言って、「もう一曲。聞いてよろこぶ人がある時に、弾き惜しみはなりませんぞ」などと、ひどく戯れかかったところ、