むしのねにきほへる 虫の音に競へる むしのねにきおえる 虫の音に競える きほふ きおう 競ふ 競う 02-110
女が泣き声を虫の鳴き音と競っている。
思ひ出でしままにまかりたりしかば 例のうらもなきものから いと物思ひ顔にて 荒れたる家の露しげきを眺めて 虫の音に競へるけしき 昔物語めきておぼえはべりし
思い出すまますぐに出かけて行きましたところ、これまで通りわたしに対してはわだかまりのない様子でしたが、それでもひどく憂いに沈んだまま荒れた家の露にそぼ濡れた庭を眺め、虫の音と競うように泣いている姿は昔の物語めいた感じに思えました。