さりとも 然りとも 02-098
あんなことがあって別れ別れになってはいてもという含み。こんな霙交じりの夜に出向けば、女の気持ちも溶けるであろうとの目測。
なま人悪ろく爪喰はるれど さりとも今宵日ごろの恨みは解けなむ と思うたまへしに 火ほのかに壁に背け 萎えたる衣どもの厚肥えたる 大いなる籠にうち掛けて 引き上ぐべきものの帷子などうち上げて
なんだかばつが悪く照れくさくはあるものの、それでもこうして雪をおかして訪ねるからには今夜こそは日ごろの恨みも消え失せようと思われて中に入りますと、灯りはほの暗いように壁に向け、着なじんで柔らかな厚手の綿入れを大きな伏籠にうちかけ香りをうつし、上げておくべき帷子などは片付けて、