なかこそちぎりふかくあはれならめ 仲こそ契り深くあはれならめ 02-074
「絶えぬ宿世浅からで」よりも「契り深くあはれならめ」という発言は当時の人生観(仏教観)からはみ出している点で注目すべきであろう。「こそ……已然形」は下に逆接でつづいてゆく。
絶えぬ宿世浅からで 尼にもなさで尋ね取りたらむも やがてあひ添ひて とあらむ折もかからむきざみをも 見過ぐしたらむ仲こそ契り深くあはれならめ 我も人もうしろめたく心おかれじやは
(左馬頭)切っても切れぬ前世の縁が深く尼になすすんでに連れ戻せた場合でも、そのまま連れ添い、あんなこともこんな場合も許しあった夫婦仲こそ契り深く情愛こまやかなものですが、自分も妻もどうして心許すことができましょう。