すゑて 据ゑて すう 据う 01-182
これは王朝文学を理解する上で、非常に重要な語である。「据う 据ゑ」とは、王朝時代の結婚形式のひとつで、正式な結婚ではなく、古代からつづく略奪結婚のようなもの。光源氏が藤壺の宮のことを思っているからといって、ここも正式な結婚を夢見ていると勝手に想像してはならない。正妻は葵の上であり、これは揺るぎない。それを揺るがせたとしたら光源氏は後見を失ってしまう。あくまで愛人としての理想である。葵の上との結婚関係を正式に破棄することを望んでいるわけではない。この点、諸訳に見える「迎えて」との訳では、「据う 据ゑ」という結婚形態の含みが消えてしまう。
かかる所に思ふやうならむ人を据ゑて 住まばやとのみ 嘆かしう思しわたる
こうした所に思い通りの人を囲って住みたいものだと、源氏の君はそればかり悲痛に思いつづけになるのでした。